研究概要 |
視覚障がい者に対し,失われた光の情報を最先端光学情報技術により提供する新しい環境認知装置について研究する.具体的には,視覚障がい者周囲の太陽を含む照明環境を測位衛星の一種と仮定し,歩行時の測位精度を格段に向上させる実時間環境光認知装置(オプティカルコンテキストスコープ)の開発を目的とする.本装置実現のためには,(1)可視光通信LED照明環境,(2)単一小型の受光装置,(3)音声案内支援サーバが必要となる.このうち(1)と(3)はすでに実用化レベルで実現し,最も困難な(2)の受光部につき今年度までの科学研究費により基本動作を確認できた.ここで核となるのは研究協力企業のブレインビジョン社(社長:市川道教氏)製超高速CMOSイメージセンサ技術である.この技術を用いて,将来的には可視光情報の復号と天井照明器具画像取り込みを同一のイメージセンサで実現し,いわゆる眼鏡型測位装置を開発することを目的とする. 平成24年度は,魚眼超高速可視光受信器作成と受光アルゴリズム開発に焦点を絞り研究を行った.具体的には,従来開発した蛍光灯とLED通信システムを基に視覚障がい者が地下街を歩行もしくは建物内外を移動する場合を想定した実時間環境光認知装置を開発した.基本構成としては,魚眼レンズ付き超高速イメージセンサに太陽光や照明光を弁別するディジタルフィルタを組合わせその輝度振幅と受光角を利用することにより,単一のイメージセンサを利用しつつ天井を含む広域の画像取得とピンポイントの可視光情報の復号を行った.さらに,障害者支援施設と連携し,実証実験を通して屋内における対象環境光のリスト作成,並びに音声案内のノウハウを積極的に装置動作に活用する方法を検討した.
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今後の研究の推進方策 |
装置全体の評価ならびに測位支援に使用する地理情報システムソフトウェアの最終的な設定を行い,視覚障がい者用実時間案内のための動作を確認する.同時に,公開デモンストレーションを実施し今後の課題及び問題点をまとめる.さらに,上記結果を申請者がプログラム委員を務めるIPIN(屋内測位国際会議)において各年度に英語で発表し,それらをまとめてIEICEもしくはIEEE学会誌に投稿する.国内においても,電子情報通信学会や日本生体医工学会などでその特徴的な原理や動作結果について得られた結果を取りまとめ,成果発表を行う.
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