研究課題/領域番号 |
24300210
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
荒牧 勇 中京大学, スポーツ科学部, 准教授 (40414023)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 随意性 / 運動制御 / 運動学習 / MRI / tDCS / 電気刺激 / フィードバック / トレーニング |
研究概要 |
本研究の目的は、ヒトの身体の随意性に関する神経基盤を明らかにすることである。 このため、随意性の低い身体部位(非利き手、足、耳(耳介筋)、体幹の深部筋(腹横筋)など)に対し、運動訓練、電気刺激、脳情報・筋情報のフィードバック等を用いて、随意性を向上させるトレーニングをおこない、そのトレーニング前後の脳構造画像、脳機能画像、脳波、筋構造画像、筋収縮動画などを利用し、随意性向上トレーニングによる脳と筋の変化を調べる。 これまでに、足の随意性を高めるトレーニングとして、サッカーのリフティングを1カ月間、週に3回、1回につき15分間おこない、そのトレーニング前後の脳構造画像を調べた。脳灰白質の体積を定量できるVBM法を用いてリフティングトレーニング前後の脳灰白質の変化を解析したところ、左足を制御する左小脳と、物体の動きを認知するためのMT/V5の灰白質体積がリフティングトレーニング後に増加していたことを発見した。この結果は、成人であっても特定のスポーツトレーニングをすればその課題遂行に関連する脳部位が発達することを示している。 体幹深部筋を対象にした研究では、筋収縮動画撮像法の開発に取り組み、体幹深部筋の動画撮像を行い、鮮明な筋収縮動画を撮像することができた。今後は筋収縮動態をリアルタイムで被験者に提示するシステムを開発し、体幹深部筋のフィードバックトレーニングが行えるようにする。 また、身体の随意性に大きく関与する関節の柔軟性を向上させる研究も行い、tDCS刺激を体性感覚野に行うことで、足首の背屈可動域が向上することを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
身体の随意性と脳の関係を調べるいくつかの研究項目を同時に進行させていて、いずれも順調に進んでいる。 足の随意性向上を目的とした、リフティングトレーニングについては一定の結果がでて、昨年度に学会発表を行った。今年度は英語論文を投稿する。 腹横筋の随意性向上を目的とした研究では、MRIで筋収縮をリアルタイムで観察する手法をもちいて研究を進めている。これをリアルタイムで被験者に提示するリアルタイムフィードバックシステムを開発する。 足関節の柔軟性を体性感覚野へのtDCSにより向上させる実験も結果が良好であり、去年度から学会発表を行っている。今年度に英語論文を投稿する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も引き続き、随意性の低い身体部位に対する運動訓練、電気刺激、脳情報・筋情報のフィードバック等により、随意性を向上させることを試み、その神経基盤を明らかにする研究を行う。 今後は、現在までの成果を論文にまとめながら、以下の研究項目をすすめる。 1.非利き手による投球訓練による神経基盤の変化 2.耳介筋の収縮訓練による神経基盤の変化 3.感覚野への経頭蓋直流電気刺激が関節柔軟性に及ぼす影響 4.体幹深部筋の筋収縮動態の観察と深部筋リアルタイムフィードバック訓練法の開発 5.股関節を伸展する際の複数の筋活動パターンの学習 6.携帯脳波計によるスポーツ動作中の脳状態モニタリング
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次年度の研究費の使用計画 |
脳情報フィードバック実験について、ジストニア患者を対象とした研究を東京で行ったが、当初は被験者を愛知県から連れて行く予定だったが、東京で被験者が見つかったため、被験者分と実験補助者用の旅費と謝金として確保していた150万円を支払わなくてすんだのが主な理由である。 次年度使用額の150万円を足すと翌年度請求分の合計は339万円となる。 この内訳は、物品費として100万円。内容は、今年度より開始する脳波実験で同時に用いる、心拍計測用のセンサ(30万円)、GSR(精神性発汗)センサ(30万円)、脳波計測解析用PC(40万円)である。また旅費として100万円。これは海外発表のための旅費2名分(30万円×2=60万円)の他、実験実施場所の京都、東京への出張旅費、体力医学会(長崎)への旅費2名分(10万円×2=20万円)として使用する。人件費・謝金は100万円をデータ測定補助者、データ解析補助者の謝金として使用する予定である。その他費用としてホームページ作成費用30万円と英語論文校正費用として9万円を確保する。
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