研究課題
スポーツ人材育成が早期化、組織化される中で、スポーツに勤しむ人々がどのように暮らしていくのか、という大きな問いに迫ろうとした。具体的には種目差を考慮するために、競技レベルと競技者数からなる「ハイレベル到達蓋然性」と、制度化された市場規模、によってスポーツ空間を設定し、種目ごとに、スポーツと社会移動および人々の生活戦略を描こうとした。生活戦略をとらえる場合に、「生存」(稼ぎ)と「生活」(にぎわい)に注目する意義も示された。市場規模は大きいものの「到達蓋然性」が低いサッカーの場合、トップアスリートになりえなかった人々も、暮らしの水準を一定程度に保つ工夫をしつつ、サッカーとかかわる暮らしを追求しており、「生活」を前提として「生存」を工夫していた。これに対して、相対的に市場規模の大きくない、バドミントンやアイスホッケーでは、学校教育を前提とした生活戦略が中心とされ、「生存」を確保し「生活」する。世界的な市場は大きいがその影響を日本人はほとんど受けていないサーフィンの場合は、地域性(サーフィンのできる地域)の影響を受けつつ、その地域に住み続けるための生活戦略を模索するという、「生活」を成り立たせるために「生存」を工夫せざるを得ない一面があり、結果的に地域の生業とも結びつくという側面もみられた。従来の、スポーツと社会移動研究が明らかにした、スポーツはごく一部の人々には社会的上昇の機会となるが、その機会は非常に限られているという知見に対し、上昇移動とは異なる志向を可能にする生活戦略が存在していることが示された。また、トップアスリートになりえなかった人々の生活戦略を示すことによって、彼らが構造の単なる犠牲者ではないことも示された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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