身体の体分節の質量、重心位置および慣性モーメントなどの体分節パラメーターは、人間の動きを科学的に分析する上で重要な変量であるにかかわらず、それらは屍体やモデリング法などから得られた値が用いられてきた。その背景には体分節体積や密度を推定することが煩雑で手間のかかることが挙げられる。本研究の目的は、被験者に非接触で人体計測を短時間に計測することが可能な三次元人体形状装置を用いて体分節体積を算出し、三次元人体計測データの健康・スポーツ科学および身体教育への活用をはかった。本年度は以下の点について検討した。 一般成人について光学式三次元人体形状側手装置による人体計測値およびMRI法による体分節組織分布の正確性と妥当性を検討し、両者を統合したデータから体分節質量や慣性モーメントなどを算出する方法論を確立する。 その結果、体分節の慣性主軸の決定と慣性モーメント算出のためのソフトウエアの開発を行った。BLSから得られた三次元の空間座標内にMRIから求めた組織分布を配置して、体分節質量の再構築を行った後重心点を求め、先ず重心を通過する慣性主軸三軸を決定し、それぞれの軸周りの慣性モーメントを算出した。 またそのためには、人体に添付したランドマークから自動的に測定部位が同定でき、その部位での長軸に直交する面での周径囲や横断面積あるいは、解剖学的切断面に沿った体分節の分割とそれぞれの体分節体積の計測などが可能となるようにソフトウエアを開発した。 成人男女それぞれ10名ずつの合計20名について計測を実施し、長育、周育、体表面積および体分節体積について正確性と妥当性を検討した。またソフトウエアの改良が不可欠であるために、工学的専門知識の提供や製作者とも連携して研究を進めた。またアムステルダムでの国際学会において研究成果を発表し、学術的研究交流を深めた。
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