研究課題/領域番号 |
24300223
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
大野 秀樹 杏林大学, 医学部, 教授 (00133819)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 白色脂肪細胞 / 褐色脂肪細胞 / 運動トレーニング / 細胞分化 / 肥満治療 / UCP-1 / Zic-1遺伝子 / 誘導型褐色脂肪細胞 |
研究概要 |
白色脂肪細胞は余剰なエネルギーを蓄積するのに対して、褐色脂肪細胞は熱転換によりエネルギー消費を行うことから、褐色脂肪細胞の機能亢進を介した新たな抗肥満療法の確立が期待されている。最近になり、褐色脂肪細胞は骨格筋細胞と前駆細胞を共通することや、白色脂肪組織において褐色脂肪細胞の機能を有する誘導型褐色脂肪細胞が出現する知見などが次々と明らかとなり、エネルギー代謝に及ぼす褐色脂肪細胞の生理的役割の解明に一層関心が高まっている。継続的に持久的運動を行っているヒトでは、非鍛錬者と比べて痩身を呈する事実からも容易に想像がつくように、持久的運動はとりわけ白色脂肪細胞・組織に生理・生化学的な変化を引き起こす。本研究では、持久的運動が白色脂肪組織の誘導型褐色脂肪細胞の形成を修飾するのかについて検討し、分子レベルからの理解を目指す。 平成24年度は、継続的な持久的運動トレーニングを施した実験動物を作製し、後腹壁、皮下(鼠径部)、精巣上体より白色脂肪組織を摘出し、褐色脂肪細胞のマーカーであるUCP-1タンパク質の発現変化について検討した。興味深いことに、後腹壁と皮下の両白色脂肪組織では、非運動群と比べてUCP-1タンパク質の発現が増加することが観察されたが、精巣上体白色脂肪組織では有意な変化は認められなかった。一方、古典的褐色脂肪細胞と称される非誘導型褐色脂肪細胞のマーカーであるZic-1遺伝子の発現は、運動トレーニングの有無にかかわらず後腹壁と皮下白色脂肪組織では観察されなかった。こうして、持久的運動トレーニングは後腹壁と皮下の白色脂肪組織において誘導型褐色脂肪細胞の形成を促すことが確認できた。現在は、両脂肪組織切片を作製し、免疫組織化学染色法を用いて誘導型褐色脂肪細胞形成についての検討を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
白色脂肪組織における誘導型褐色脂肪細胞の存在を明確にするためには、組織切片を調整し免疫組織化学染色法によって検出する必要がある。申請した組織切片作製機器であるミクロトームの納入が予定より時間を要したため、当初の計画よりデータの取得が若干遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
白色脂肪組織切片を中心とした免疫組織化学染色法と、共焦点レーザー顕微鏡システムを連関させた褐色脂肪細胞可視化検出システムを構築し、運動により誘導される誘導型褐色脂肪細胞の検出と白色脂肪組織における分布動態について検討する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
未使用金額については、すでに実験試薬等の購入を済ませており、平成25年度は交付申請書の計画に沿った使用を予定している。
|