認知症患者を対象に、笑顔・怒り顔などの表情で事象関連電位を誘発し、誘発刺激に対する反応波の潜時から、表情に対する感情とそれに伴う認知機能の変動を評価する事が本研究の目的であった。 しかし、認知症が進行した被験者において、上記の方法で事象関連電位を誘発することは極めて困難であった。そこで、プロトコルの一部変更を行い、表情画像を事象関連電位の誘発刺激としては用いず、課題として用いることを考えた。事象関連電位は、申請者が従来より認知症患者を対象に用いていた、ホワイトノイズを背景にクリック音で誘発する手法を用いた。 その結果、笑顔画像を見せた後は、怒り顔を見せた後に比して、クリック音によるP300潜時が短縮する傾向を認めたが、有意な差ではなかった。 また、介護職におけるストレス評価に関する研究は、最終年度も継続した。新たに10人の被験者において、介護中のストレスをホルタ心電図RR間隔の周波数解析で行うと同時に、看護師の看護業務中のストレスも同様の方法で測定した。介護福祉士と看護師は、おむつ交換、体位変換、歩行介助等類似した業務を行うが、同じ業務中のストレスを比較すると、介護福祉士の方が有意に大きかった。 両者の背景の差は、教育時間の差、教育内容の差、報酬の差など様々考えられ、介護福祉士のストレス解消には、教育、待遇など改善すべきことが多く残されていることが示唆された。 介護福祉士のストレスに関しては、今後、新たな研究として立ち上げ、深く研究していきたいと考えた。
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