研究実績の概要 |
【目的】糖尿病患者数は近年激増しており、より早期の予防策が望まれている。昨年度までの検討によりアルコール摂取が肝インスリン抵抗性(IR)を惹起し、空腹時血糖値を増加させ、糖尿病潜在期を形成する一要因である可能性が示唆されたが、因果関係は不明である。そこで、肝IRに対するアルコール摂取の影響を明らかとすることを目的として研究を行った。 【方法】対象は非糖尿病の男性で日常的にアルコールを摂取し、空腹時血糖値が95mg/dl以上の者10名。被験者に対して生活習慣の調査、1H-MRS法による肝細胞内脂質(IHL)の定量、 [6,6-2H2]glucoseを用いた2ステップ高インスリン正常血糖クランプ(インスリン注入速度10、20mU/m2/minを各3時間)により肝臓、骨格筋のIRを個別に判定した。その後7日間のアルコール摂取を禁止し、前述の項目を再測定した。 【結果】7日間の禁酒の結果、肝IRと密接な関連がある空腹時血糖値は全例改善(103.6±11.1mg/dl→97.1±7.3mg/dl, P<0.01)し、IHLは有意に変化しなかった。クランプ検査の結果、骨格筋IRの指標は有意に改善しなかったが、肝インスリン感受性の指標である空腹時の内因性糖産生率(EGP)(2.18±0.17→2.05±0.14mg/kg/min, P<0.05)、クランプ1stステップにおけるEGP(1.11±0.45→0.70±0.39mg/kg/min, P<0.05)は有意に低下した。 【結語】本検討において、非糖尿病の男性においてアルコール摂取制限は肝IRを改善し、空腹時血糖の低下をもたらすことが初めて示された。
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