研究概要 |
近年、認知症や認知機能の低下の予防方法の1つとして、身体活動を活性化させることの有用性が注目されている。本研究の主な目的は、軽度認知障害(MCI)を対象に、できる限り多くの者が実行・継続でき、高齢者に最適な日常身体活動パターンに関する新しい指針を作成することであった。本研究では、大規模クリニング調査および、多面的活動促進の介入効果によって、身体活動・機能と認知機能との関連性を調べた。特に日常の身体活動のパターンおよび認知機能を客観的かつ正確に評価するため、アルゴリズムを工夫した3軸の加速度センサーを用いて身体活動測定を行い、独自に開発したタッチパネル式タブレット端末を用いて認知機能評価を行った。活動促進効果検討の多面的運動介入の結果、認知機能は改善し、介入前後の認知調査反応に対する前頭前野の活性領域の変化を明確に観察でき、特に、左半球野(left hemisphere areas)及び下前頭回(inferior frontal gyrus)での活性化に有効であることが示された。また、MCI高齢者の身体活動の量と質は睡眠状態と関連があり、男女ともより良好な睡眠状態に関連する身体活動水準は, 歩数>7,000-8,000 歩/日かつ/または中強度活動時間>20 分/日であった。この結果はWHO,CDCの高齢者の身体活動の指針(週150分(21分/日)の結果と同程度であった。更に、この関係は中強度活動と歩数の相互関連性があるほど良好な睡眠状態であることが示され、単純に歩数・中強度活動時間のみではなく、適切な活動の量と質の組み合わせが重要であると考えられた。今後、介入効果による、これらの関連性を検討する。
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