研究課題/領域番号 |
24300245
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
金澤 等 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (50143128)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 繊維 / 吸着 / 放射性セシウム / 空気清浄機 / 不織布 / フィルター / 水溶性 |
研究概要 |
本研究は、繊維を表面積の大きなマトリックスと捉えて、繊維そのもの及び化学的な処理を加えた繊維により、環境汚染物質の浄化機能性材料の設計を目指す。次の事を実施した。 1)吸着の基礎的な検討:前年度から継続して、各種繊維に対する有機化合物の吸着を調べ、繊維と有機化合物の間に、分子構造に特有の相互作用がある事を見出した。そのうえで、さらに、詳細に吸着実験を行った。 2)化学処理繊維または不織布による放射性セシウムの吸着の可能性:大学構内にある放射性セシウム(Cs134,Cs137)を33.7万Bq/kg含む土壌を採取して、水、アルカリ性水溶液、各種塩水溶液等への抽出実験を行った。土壌から水への溶解性を測定した結果、放射性セシウムは土壌に強い結合力で捕捉されており、水、アルカリ、金属塩には全く溶解しないと考えた。ただし、アンモニウム塩、強酸には、ごく僅かに溶ける事を確認したが、極めて微量であり、普通の生活環境では、「放射性セシウムが水に溶けないこと」が重要である。 3)放射性セシウムを吸着した埃の問題:放射性セシウムが土壌に強く吸着している事を熟考すると、放射性セシウムを吸着した乾燥土壌(埃)の処理が問題であると考えた。そこで、空気清浄機のフィルターで、放射性セシウムを吸着した埃を効果的に捕捉する事が現実的で、我々の生活に役立つと考えた。空気清浄機(主にダイキン工業MCK55NKS)6台を用いて、学外(屋根付き)に設置して、数日間運転して得られる粉塵を採取してγ線を測定した。その結果、放射性セシウムは粉塵とともに、空気清浄機のフィルターに吸着されることがわかった。そこで、粉塵をより多く吸着できるように、フィルターを設計する事が重要であると考えて、フィルター素材に、各種化合物を含浸させて、その空気清浄性能を比較した。その結果、化合物による差異が認められた。さらに、詳細を継続検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
繊維に対する有機化合物の吸着の基礎的な検討を行い、分子構造からの解釈を勧めている。吸着現象について、これまでに例のない検討であり、予定通りに結果は出ている。放射性セシウムは土壌や自然界の材料に強固に結合しており、それだけを吸着できる材料の設計は不可能である事がわかった。その結果、埃の吸着に意味を見出して、空気清浄機のフィルターの設計に絞って実験を継続いている。
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今後の研究の推進方策 |
吸着の基礎実験の継続(分子間力の検討)を行う。一方、空気清浄機用のフィルターの化学的処理による粉塵吸着の改良を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に合算して、より有効に使用するために、繰越をした。 人件費支出と学会発表の件数が予定外に増えたので、それを考慮した。
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