研究実績の概要 |
繊維そのもの及び化学的な処理を加えた繊維により、環境汚染物質の浄化機能性材料の設計を目指した。主に、次の事を実施した。 (1)放射性セシウムの存在状況 1)大学構内にある放射性セシウム(Cs134,Cs137)を34万Bq/kg含む土壌を採取して、水、アルカリ水溶液、各種塩の水溶液等への抽出実験を行った。その結果、放射性セシウムは土壌に強い結合力で捕捉されており、水、アルカリ、金属塩には全く溶解しないと判断した。ただし、アンモニウム塩、強酸には、極めて微量に溶ける事を確認した。そこで、水中溶存のセシウムの吸着除去を追求する事には、意味が少ないと考えた。2)放射性セシウムを吸着した粉塵の調査:学内における埃を掃除機で採取して、ゲルマニウム半導体装置で、放射性セシウム含量を測定し、数千~15000Bq/kg程度存在する事がわかった。地面の表層に存在する放射性セシウムが、外から室内に持ち込まれると判断した。 (2)放射性セシウムを吸着した粉塵の対策 セシウムカチオン(Cs+)は、イオン交換されて、粘土質にサンドイッチ状に取り込まれているので、吸着土壌のみを捕捉することは、不可能と考えた。そこで、除去対象は粉塵であるので、空気清浄機が有効と考えた。現在、空気清浄機のフィルターは、空気中の粉塵をろ過する機構である。ろ過ではなく、吸着性能の高いフィルターが有効である可能性を考えた。そこで、空気清浄機6台を用いて、学外(屋根付き)に設置して、数ヶ月運転して得られる粉塵を採取してγ線を測定した。その結果、放射性セシウムは粉塵とともに、空気清浄機のフィルターに吸着された。そこで、フィルター素材として、各種金属塩を付加させた合成繊維不織布等を作成した。その性能を比較した結果、化合物による差異が認められた。現在、学内は除染作業中であるので、分布が変わる事になる。考慮のうえ、継続的な検討をする。
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