研究課題/領域番号 |
24300252
|
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
石井 剛志 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (50448700)
|
研究分担者 |
新井 映子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (90134783)
中山 勉 日本獣医生命科学大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50150199)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 渋味 / 苦味 / 茶ポリフェノール / テアフラビン類 / 酸化 / 分子会合 / 脂質膜蓄積 |
研究実績の概要 |
渋味は、特定の受容体を介する基本味とは異なり、タンニンと唾液タンパク質あるいは細胞成分との結合を介して惹起される複合的な味覚刺激であると予想されているが、その詳細は明らかになっていない。本研究では、茶ポリフェノールの渋味特性を実験的に明らかにするとともに、各ポリフェノールの生体成分に対する結合特性を分子間相互作用の観点から解析することで、渋味の発現機構を明らかにすることを目的とした。 紅茶ポリフェノールであるテアフラビン類は、強い渋味とともに苦味を有することから、苦味の受容体を共同研究者とともに探索した。ヒト苦味受容体であるhTAS2R39がテアフラビン類の苦味の受容体であることを見出し、原著論文として発表した。 茶ポリフェノールは、溶液中で酸化されることにより重合し、苦味や渋味(苦渋味)が強くなることが経験的に知られている。茶ポリフェノールの酸化と苦渋味の関係を解析し、酸化により苦渋味が強くなることを確認した。茶ポリフェノールの抗酸化性や酸化安定性を網羅的に解析し、クーロアレイ検出器を備えたHPLCにより酸化還元電位を測定することで溶液中での酸化挙動を評価する方法を構築した。得られた成果は原著論文や学会にて発表した。 茶ポリフェノールの生体成分表面における分子挙動を解析した。テアフラビン類は水溶液中で会合体として存在するだけでなく、脂質膜表面上でも会合体を形成し、濃度や摂取回数に応じて膜表面に蓄積することで渋味の蓄積に関与することが示唆された得られた成果は原著論文や複数の学会にて発表した。 渋味物質の生体応答の解明を目指して、共同研究者とともに渋味を有するポリフェノールの血流改善効果をラットを用いた動物実験により評価した。膜透過性が低く渋味の強いポリフェノールは、血流やエネルギー代謝の促進作用を示す可能性が示唆された。得られた知見の一部は原著論文や学会にて発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体成分との結合反応を利用した渋味の評価系の開発・応用が進んだことで、渋味の発現機構を明らかにするうえで重要な、渋味特性(先味・後味、渋味の蓄積)と茶ポリフェノールェノールの結合特性(タンパク質や脂質膜上での分子挙動)に関する知見が集積している。渋味の強弱に影響する因子の探索も進んでおり、渋味の生体応答や苦味の受容体に関する知見も得られるなど研究の幅も広がっている。前年度は学会発表が中心であったが、今年度は原著論文での発表件数も増加し、現在は更なる発表準備を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、茶ポリフェノールの支部もの発現機構の解明を目指して、渋味物質の分子挙動や分子標的の解析を進めていく。特に、口腔内で感じる渋味と消化管内で感じる渋味(生体応答)の両面から解析を進め、渋味の発現機構とその生理的意義の解明を目指していく。 これまでに得られた成果を利用した出口研究を目指して、構築した渋味評価法のキット化を目指す。また、渋味抑制素材の開発を通じて、渋味の強いポリフェノールの機能性を生かした機能性強化食品の開発を研究分担者の新井映子教授と進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度内に研究代表者である石井の静岡県立大学から神戸学院大学(現所属:平成27年度より)への移動が決まり、研究室運営上の様々な対応に追われたため、予定していた実験の一部に着手できず、研究に遅延が生じたことによる。
|
次年度使用額の使用計画 |
当初の計画通り、研究進展に必要な消耗品の購入や研究成果の発表に関わる旅費および論文作成費等に使用する予定である。
|