研究課題
渋味は、特定の受容体を介する基本味とは異なり、タンニンと唾液タンパク質あるいは細胞成分との結合を介して惹起される複合的な味覚刺激であると予想されているが、その詳細は明らかになっていない。本研究では、茶ポリフェノールの渋味特性を実験的に明らかにするとともに、各ポリフェノールの生体成分に対する結合特性を分子間相互作用の観点から解析することで、渋味の発現機構を明らかにすることを目的とした。緑茶ポリフェノールであるカテキン類と紅茶ポリフェノールであるテアフラビン類のタンパク質凝集反応における分子挙動を解析した。凝集能は、カテキン類においてはガロイル基の存在が、テアフラビン類においてはベンゾトロポロン骨格とガロイル基の存在が重要であることを確認した。また、それぞれの構造中の部分的な酸化(例えばカテキン類のB環やベンゾトロポロン骨格)が凝集能を高め、結果として渋味を強めることを見出した。得られた成果は、学会にて発表し、原著論文の作成を進めている。渋味物質の生体応答の解明を目指し、共同研究者とともに渋味を有するポリフェノールの脂肪蓄積抑制作用、エネルギー代謝亢進作用および温度感受性TRP受容体活性化能を評価した。各調査項目について正の活性を見出し、得られた成果は複数の原著論文にて発表した。これらの結果を踏まえ、渋味の生理的意義のひとつとして、エネルギー蓄積の阻害に働く物質のシグナルとの仮説に至った。苦渋味(渋味と付随して感じる苦味)の抑制技術の構築を目指し、共同研究者とともに茶ペプチド素材の開発を行った。抑制成分の効率的な探索法の構築に成功し、有用なペプチドを見出した。得られた成果は、学会にて発表した。
3: やや遅れている
研究代表者自身が平成27年度(平成27年4月1日付)に研究機関を移動したことに伴い、研究備品の移動や整備を含め研究室運営や実験遂行上の様々な事務対応を行った。そのため、予定していた実験がやや遅れてデータ整理が間に合わず、得られた成果の一部に関して論文投稿や学会での発表に至っていない。
得られた成果の発表に向けて、実験の細部をつめたうえでデータ整理を行い、原著論文、著書および学会発表要旨・スライドの作成を進める。
研究代表者自身が平成27年度(平成27年4月1日付)に研究機関を移動したことに伴い、研究備品の移動や整備を含め研究室運営や実験遂行上の様々な事務対応を行った。そのため、予定していた実験がやや遅れてデータ整理が間に合わず、得られた成果の一部に関して論文投稿や学会での発表に至らなかったことにより、未使用額が発生した。
次年度は、当初の計画通り、成果発表に関わる費用に充て使用する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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https://www.kobegakuin.ac.jp/information/public/teacher/nutrition/ishii.html