研究課題/領域番号 |
24300253
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
中村 考志 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (90285247)
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研究分担者 |
岡本 繁久 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (30211808)
今井 俊夫 独立行政法人国立がん研究センター, その他部局等, 支援施設長 (20342884)
青井 渉 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (60405272)
徳田 春邦 金沢大学, その他の研究科, 准教授 (60111960)
小林 ゆき子 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (10381930)
久保 康之 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (80183797)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 京野菜 / 桂ウリ / 食品機能性 / 癌 / 糖尿病 |
研究概要 |
1.桂ウリの香気成分MTAによる大腸がん抑制の遺伝子サイレンシング機構を解明する目的で,バイサルフェイトシークエンス法 及びコブラ法を用いてRCM-1細胞に由来するcyclinE2遺伝子の転写制御領域(-1000)から転写領域(+500) までの範囲のメチル化度合を解析し,MTAによるメチル化度合の変化を示唆する結果を得た. 2.MTA塗布投与によるICRマウスを用いた皮膚二段階発がんの抑制作用を確認した.MTA自由飲水経口投与によるICRマウスを用いた皮膚二段階発がんの抑制作用をMTAの経口投与(1,000, 250, 25 ppm)で発がんの抑制傾向を確認できたが有意差(p<0.05)はなかった.DMBA誘発Zuckerラット乳腺発がんに対するMTA(200, 40 ppm)の作用を解析し,発がん抑制(p<0.05)あるいは抑制傾向を示すことを明らかにした. 3.運動前にマウスにMTAを経口投与すると,運動後の筋肉pHの有意な回復がみられ疲労軽減効果が観察された.ヒト(健常若齢男性)では桂ウリジュース摂取後に運動したときの呼気ガス分析・血液分析・主観的疲労度測定をおこなったところ,血中乳酸濃度の有意な低下を観察し,一定の疲労軽減効果を認めた. 4.桂ウリ摂取時の血糖値の非上昇をヒトで証明し,ダイエット・糖尿病食へ適用可能であることを実証する目的で,桂ウリジュース摂取時の血糖値の非上昇をヒト健常者10名で証明し,軽度糖尿病患者2名で予備的なデータを得た. 5.桂ウリに発生する黒色斑点の発生原因がウリ類炭疽病菌であることを明らかとした.その防除法としてホウ酸塩の適用の可能性を示唆した.桂ウリの圃場の近隣作物の種類が病害発生に影響している可能性が示唆された.2年間の圃場地図を見ると,近隣での黒大豆と小豆の栽培が桂ウリの病害発生に関与している可能性を示唆した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
5つの研究主項目すべてにおいて研究の前進が見られている.食品機能性の面では桂ウリのMTAのin vitroで認められた機能性がin vivoでも認められることを複数の実験系で示唆しており,試験管内の実験から動物実験へのシフトと動物実験からヒトでの試験へのシフト,ヒト健常者から糖尿病患者へのシフトが併行して遂行されつつある点で,桂ウリの病態の面では病原菌の同定と防除方法の一つを示唆するにまで至った点で研究がおおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
1.桂ウリの香気成分MTAによる大腸がん抑制の遺伝子サイレンシング機構の解明には,バイサルファイト処理の完全性を高めることや解析領域の再検討などを通して,精度が高く,且つ汎用性を保証できる手法を確立する.以上によりMTAによるcyclinE2遺伝子の転写制御領域のメチル化度合の変化を詳細に解析する. 2.MTA塗布投与によるICRマウスを用いた皮膚二段階発がんの抑制作用では,糖尿病疾患での後期段階産生物による発がん性に対するMTAの抑制効果を試験する.桂ウリを大きく水分と固形分に分けてそれぞれの効果を試験する.MTA自由飲水経口投与によるICRマウスを用いた皮膚二段階発がんの抑制作用ではMTAの経口投与(1,000, 250, 25 ppm)で発がんの抑制試験の追試をおこない,抑制傾向のみか有意差をもつ抑制効果があるのかを明らかにする.MTA経口投与によるZuckerラットを用いた乳がん抑制作用および分化誘導作用の検討では,MTAによる発がん抑制機序について、高レプチン血症に伴う乳腺組織でのSTAT3活性化に対する抑制作用を中心に解析する.更に,F344ラットを用いて,高脂肪食による高レプチン血症に伴う変化とDMBA誘発乳腺発がんに対するMTAの影響を解析する. 3.MTAと桂ウリジュースの運動時疲労軽減効果をそれぞれマウスとヒトで証明する試験は終了しているため,マウスとヒトの結果を合わせて論文1報を執筆する.桂ウリジュース摂取時の血糖値の非上昇をヒト(健常者と軽度糖尿病患者)で証明し論文を執筆する.糖尿病患者10名でデータが得られたときには2報目の論文を執筆する. 4.ウリと黒大豆がを隣接して栽培した上で,無農薬区を設けて病害発生を観察する.病害が発生したときは桂ウリと黒大豆に感染する菌の同定と接種感染試験をおこない,両作物間の病害関与の有無を検定する.
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次年度の研究費の使用計画 |
糖尿病患者を対象とした試験に使用する物品費の支出額が当初予定していた額より少額であったために当該助成金が生じた. 当該助成金の額は26年度に必要な物品費に充てる予定である.
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