研究課題/領域番号 |
24300261
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
今泉 和彦 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (60145068)
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研究分担者 |
立屋敷 かおる 上越教育大学, その他部局等, その他 (20119324)
白土 健 早稲田大学, 人間科学学術院, 助手 (60559384)
鈴木 英樹 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (40235990)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 亜鉛欠乏 / アドレナリン受容体 / 生体防御機能 / 白血球系細胞 / 脱共役タンパク質 / 血漿亜鉛濃度 / 亜鉛欠乏とストレス / 熱産生能 |
研究概要 |
本年度は離乳期と成熟期の雄性ラットの生体防御系および体熱散逸系の各機能に及ぼす亜鉛欠乏の影響を系統的に明確にするため、離乳期と成熟期の雄性Sprague-Dawley系ラットを亜鉛欠乏食(Zinc-deficient food:ZDF)で夫々4週間および10週間飼育した際の各種白血球系細胞数、血漿コルチコステロン・Znの各濃度および直腸温を経週的に測定した。ZDF終了時には、骨格筋内のβ2‐受容体(β2‐AR)・グルココルチコイド受容体(GR)のmRNA発現とタンパク質発現、肩甲骨間内の褐色脂肪脂肪組織(Brown adipose tissue:BAT)に存在する熱散逸タンパク質1(Uncoupling protein: UCP-1)のmRNA発現を詳細に検討した。その結果、ZDFによる離乳期の好中球・好酸球・好塩基球・単球の各数は経週的に有意に増加したが、リンパ球系の各細胞には影響がみられなかった。これらの結果は初年度に得られた結果と同じ傾向であり、データの再現性を確認できた。また、離乳期の直腸温・血漿Zn濃度はZDFによって有意に低下し、ZDFによる熱産生の低下作用と血漿内Zn濃度の有意な低下が確認された。一方、離乳期の血漿コルチコステロン濃度もZDFによって有意に高まり、初年度とすべて同様の傾向が得られた。一方、離乳期ラット骨格筋のβ2‐AR・GR・UCP-1の各発現量はZDFによって有意な変化が認めらなかった。以上の結果とほぼ同様の結果は成熟期でも得られたが、直腸温の応答のみは離乳期と成熟期の間で異なっていた。即ち、離乳期ではDDF直後より直腸温が下がり、4週間後には対照群より‐1.1℃下降した。成熟期ではZDFの5週目まで変化が無かったが、それ以降下降し、10週目でZDF群が対照群より‐1.4℃低かった。以上より、DZFの生体影響は週齢差があると判断できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画の達成度を現時点で眺めると、研究の目的はほぼ順調に達成していると判断している。離乳期と成熟期におけるSprague-Dawley系雄性ラットを亜鉛欠乏食(ZDF)で其々4週間と10週間飼育した際の各種白血球系細胞(好中球・好酸球・好塩基球・単球・リンパ球数)の数、血漿内のコルチコステロンおよびZnの各濃度、深部体温の指標とした直腸温の変化、骨格筋内のβ2‐受容体(β2‐AR)およびグルココルチコイド受容体(GR)のmRNA発現とタンパク質発現、肩甲骨間内の褐色脂肪脂肪組織(Brown adipose tissue:BAT)に存在する熱散逸タンパク質1(Uncoupling protein:UCP-1)のmRNA発現に対するZDFの影響については程度の差はあるが、いずれも同様の傾向を示している。これらのことから、本年度は所期の目的を果たしているものと判断している。 本年度は、亜鉛欠乏(ZDF)による離乳期・成熟期ラットの体重や骨格筋の成長が著明に抑制されることから、成長に伴う生体防御機能や体熱散逸機能と密接に関係する骨格筋内のインスリン様成長因子‐1受容体(Insulin-like growth factor-1receptor:IGF1-R)および亜鉛トランスポーター(Zinc transporter:ZT)のmRNA発現・タンパク質発現に及ぼすZDFの影響を明らかにするため、離乳期ラットを用いて4週間にわたるZDF実験を行い、下肢骨格筋のうち収縮速度の速い筋=長指伸筋)と遅い筋(=ヒラメ筋)を用いて比較・検討する。併せて昨年度に実施した上記パラメータの結果の再現性を確認する。また、ZDFによる直腸温の低下作用とBAT内のUCP-1発現量が相関しない生理学的背景を明確にするため、集中的に検討する。
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今後の研究の推進方策 |
離乳期のSprague-Dawley系雄性ラットを亜鉛欠乏食(Zinc-deficient food: ZDF)で2週間および4週間について飼育した際の二種類の下肢骨格筋【収縮速度の速い長指伸筋(Extensor digitorum longus EDL)および収縮速度の遅いヒラメ筋(Sleus:SOL】内のインスリン様成長因子‐1受容体(Insulin-like growth factor-1 receptor:IGF-1R)および各種亜鉛トランスポーター(Zinc transporter:ZnT)のmRNA・タンパク質発現を逆転写ポリメラーぜ連鎖反応(Reverse transcription polymerase chain reaction:RT-PCR)法およびWestern blot法で測定・解析する(白土 健)。対照ラットは通常食で飼育し、上記と同一の条件で検討する。EDL筋とSOL筋の重量を常法にて単離・秤量する。分析までは‐80℃で凍結・保存する。また、飼育一週間ごとに血漿を調製し、IGF-1・Zn・コルチコステロンの各濃度を酵素標識抗原抗体法(Enzyme-linked immunosorbent assay:ELISA)法で分析する(今泉和彦)。褐色脂肪組織(Brown adipose tissue: BAT)のミトコンドリア内の脱共役タンパク質‐1(Uncoupling protein-1:UCP1)mRNAの発現についてもRT-PCR 法で測定・解析する。これらの測定・解析法についてはすべてルーチン化されているため、実験を遂行する上で支障はない。以上の実験を行うため、ラットの飼育・管理を計上した。以上の結果などのついては各種の学術誌や学会で発表するため、英文校正・出張費を計上した。最後に、3年間の研究成果を報告書として纏める(今泉和彦、白土 健)。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、血中の白血球数、直腸温、PCRによるmRNAの発現量の解析など、本研究室のルーチンワークによる実験が中心となった。これらの解析には主として前年度に購入した試薬類を使用した。そのため、残予算を次年度に繰り越し、本年度の実験計画の遂行により得られた現象について、それらのメカニズムを詳細に検討するためにかかる費用(主として実験試薬類・実験動物・亜鉛欠乏食)として繰り越すこととした。 本年度は各種のアドレナリン受容体、グルココルチコイド受容体、脱共役タンパク質の発現解析はmRNAレベルでの解析が中心となった。次年度は褐色脂肪祖組織と各種の骨格筋から細胞膜・細胞質・核の各タンパク質画分を精製し、各因子についてそれぞれ抗体を用いてウェスタンブロット法でその発現量をタンパク質レベルで解析する予定である。そのために必要な試薬類の購入に使用する。
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