研究課題/領域番号 |
24300262
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
谷口 宏充 東北大学, 東北アジア研究センター, 名誉教授 (70125251)
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研究分担者 |
永広 昌之 東北大学, 学術資源研究公開センター, 名誉教授 (10124554)
宮原 育子 宮城大学, 事業構想学部, 教授 (80295401)
久利 美和 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (90374917)
宮本 毅 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (90292309)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 科学コミュニケータ / 東日本大震災 / 地域復興 / ジオパーク / 被災遺産 / 宮城県 |
研究概要 |
本研究の具体的内容は大きく1, 被災遺産や地層など見学・学習対象の調査・整理と教材化、2, 科学コミュニケータや語り部など説明者の育成教育、と3, 実際に活用するためのジオパークなど仕組みと組織づくり、の3項目に分けることができる。これらの内、前2項目は主として私たちが行う事項であるが、最後は自治体や国の関係機関との協力によってはじめて成立することがらである。1, については地域の地質や地形などの通常のジオの対象にしているものについては長い研究の歴史があるため、補足のための調査はあるものの整理などは進んでいる。一方、被災遺産については研究の歴史もなく、そのような調査経験にも乏しく、また復興の名のもとに片端から消滅しているため、困難を極めている。しかし現在、約50ヶ所についての調査を終了し、一部の地域については教材化の目途はついている。2, の項目については、その準備としてすでに私たちだけでの検討のための1巡検を行い、また大阪の高校教師グループと大学教師グループ向けの2巡検を行い、それぞれ有益な改善意見を得ている。また3, の項目とも関連することであるが2, などによる改善のための意見をも参考にして、今後、一般市民や児童生徒を対象とする場合には、どのような教材と案内ルートを設ければよいか、その検討も進んでいる。 これらに対して最も遅れているのが3, の項目である。当初の見通しとは異なって各関連自治体の復興の遅れがひびき、なかなか仕組みづくりにまでは到達できない。ただし松島町では今春には話し合いが再開され、松島湾沿岸部での組織づくりが進展するものと考えている。更に、メンバーの努力によって仙台市や山元町など仙台湾沿岸部でも話し合いが始まる機運が高まっており、今後の進展に期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初立てた研究計画とは異なることとして1, 今回の東日本大震災の被災状況の把握とその調査・教材化に関する私たちが有する経験・能力に関する問題と、2, 被災自治体との協同体制に関する問題、とがあることが明らかになってきた。1, については今回のような巨大災害についての近年の経験がないことが最も大きな原因であり、参考にするべき先行研究が乏しいことがあげられる。そのため、そのような場面やフイルドに強いメンバーを集めたはずにもかかわらず、残念ながら事前の計画ほどには進展していない。2, については自治体の「復興の遅れ」と「将来展望の不足」とが具体的な問題になっているもののように思える。しかし研究開始後2年を経過して、これらの問題に対してどのように対処するべきかの方針は少しずつ明らかになっている。
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今後の研究の推進方策 |
研究推進に関しては「現在までの達成度」の箇所で述べたような二つの問題がある。基本的にはこれらの問題を克服して進展させるのが方針である。 1, については必要性がはっきりしてきた対象(例えば農業や考古分野)に対しては、必要な人材を分担者や協力者になっていただき、少しでも内容の充実をはかり先に進める。 2, に対しては現在のメンバーの中には、関連自治体においてリーダーシップを発揮している人材がおり、その活動を他が助けることによって少しでも改善を図りたい。また、各自治体において学習会や現地見学会などの一般市民向けの行事を開催することによっても、改善がはかられるものと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
すでに「実績」や「達成度」に関する部分でのべたことであるが、「調査や整理」について、及び「自治体との協同作業」について進行が遅れている。そのため、それらに関連して使用する予定であった調査費や学習会の開催などに関する費用などで未使用の部分が生まれた。また次の使用計画において述べるが、次年度ないし最終年度には自治体や一般の市民たちが使用することのできる資料集やガイドブックを出版することが重要であり、そのために本年度は無理と無駄のない使用を心がけた。 本研究の意義を考えると、東日本大震災による被災遺産や私たちを取り囲む地質や生態などの環境にかかわる資源を活用して、それらを防災や理科、あるいは環境教育のために生かすことが重要であり目標である。そのための資料づくりと、人材育成の体制をさぐることが必要になる。研究が進む中で以上のようなことがらがより明確になってきたため、「最終的には自治体や一般市民でも十分に理解し活用することのできる形で研究成果を出す」ことに焦点を絞ろうと考えるようになった。そのため今後は調査を更に進めるが、同時にその結果を整理し、より理解が容易な形にまとめ、各地での学習会や野外授業に生かすこと、そして印刷物にまとめることに集中して行きたい。予算はそれを生かす形で使用したい。
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