研究課題/領域番号 |
24300266
|
研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
藤岡 達也 滋賀大学, 教育学部, 教授 (10311466)
|
研究分担者 |
佐藤 健 東北大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90290692)
岡田 成幸 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50125291)
榊原 保志 信州大学, 教育学部, 教授 (90273060)
大辻 永 茨城大学, 教育学部, 准教授 (20272099)
今田 晃一 文教大学, 教育学部, 教授 (40342969)
根本 泰雄 桜美林大学, 自然科学系, 准教授 (30301427)
五十嵐 素子 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (70413292)
伊藤 孝 茨城大学, 教育学部, 教授 (10272098)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 防災教育 / 自然災害 / 東アジア等 / ESD / STS教育 / 東日本大震災 |
研究概要 |
まず,前年度に引き続き東日本大震災の被災地,宮城県,福島県において,震災後の学校教育を中心とした防災教育及び復興教育についてのアクションリサーチ的アプローチを展開した。宮城県においては,被害の大きかった仙台市の湾岸部を中心に,被災地の学校の現状を掌握するとともに復興に向けての取り組みを実施している学校においての「防災科」を設置しようとする文科省研究開発学校での教育課程における内容と実践を調査した。福島県においては,福島県教育委員会と連動して,これからの福島県の防災教育と放射線教育の在り方を探り,その成果をまとめた防災教育副読本を編集し,県内の全地域において悉皆の教員研修を担当した。研修参加者への質問調査から研修内容についての意義を分析した。また,国内各地の防災教育への取り組みについて,文科省・教員研修センターをはじめ,茨城県・長野県・群馬県・山形県・佐賀県・滋賀県・新潟県・大阪府などの教員研修を中心に調査を行った。この中で日本の防災・減災教育の現状と課題が明確になりつつある。同時に日本の学校教育において,ICTを用いた防災教育の在り方についてもモデルプログラムを作成した。 一方,これまでの海外での実践授業や国内の調査を踏まえて,中国・内モンゴル,マレーシア,台湾等において研究授業を実施した。防災・減災について,十分に意識されない国や地域においても自然災害だけでなく,気象災害・火山噴火など自然景観との関連性を持った教材やESD(持続発展教育)の視点を取り入れた教育プログラム作成の意義が明確になった。1年目に作成した教材の主題である自然災害の側面だけでなく,自然景観を取り入れた教材の開発によって,地学的知識の重要性を明確にした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災前後の日本における防災・減災教育の動向を明確にするとともに,震災を踏まえ,また今後予想される様々な自然災害に備えての国内における今後の学校防災の現状と課題が現地調査等によって,明らかになりつつある。日本各地域の自然環境に応じた防災・減災の状況の多様性,教育行政の対応だけでなく,知事部局との取り組みのもと必要な学校安全計画,学習指導内容など,現状と課題がつかめてきている。従来,実践的な防災教育において,科学的リテラシー育成との関連が明確にされていなかったことを福島はじめ様々な地域の実例からモデルを示すことができた。つまり,福島第一原子力発電所事故に見られるように,これまでの自然災害には見られなかった科学・技術・社会の相互関連教育の必要性と具体的な取り組みが求められ,それらの教材も開発されつつある。 同時に国内においては,自然災害の取り扱いについては,教育内容,教育方法,教育システムとも十分に系統性を持った状況であるとは言えないことも明確になった。学校教育において,科学的リテラシー育成のために地学的内容をどのように取り入れていくかも実践授業等を通して明確になりつつある。これには教員の役割が重要であり,研究者,教育現場とともに教育行政などが連携して,防災・減災に関連した教員研修のシステム作りが求められる。 また,台湾,マレーシア,ベトナムなど防災・減災も含めた科学教育の在り方,国際理解を踏まえた取り組みについても実践授業後の質問調査の分析を通して観点が明らかにされつつある。特に日本に対して興味・関心が高い学生は防災・減災についても意識が高くなる傾向がある。
|
今後の研究の推進方策 |
国内においては,東日本大震災後の防災・減災に関する教育カリキュラムの構築の可能性や,教員研修・教員養成においての課題が明確になりつつある。今年度はこれまでの取組を踏まえ,全国の各地域の自然災害及び自然景観の実情に基づいた教材を開発し,全国各地域(例えば,東北・関東・中部・近畿・四国・九州各ブロックごと)において教員研修を実施し,その教育プログラムの一般性と地域性に基づく意義を明確にする。また,教員養成系大学においても,教職実践演習・教材内容論などの時間を例にして,防災・減災に関する教育内容を取り入れた教師教育の授業の在り方を探る。 東~東南アジアを中心とした地域においては,台湾やフィリピン,ベトナムにおいても研究授業を実践し,それらの評価を踏まえて最終的な教材作成,プログラム開発を実施する。これらの取組から,日本と他のアジアとの防災教育における共通性と差異性を整理し,これらに基づいた今後の防災・減災の在り方を探る。国内の防災・減災教育についても,国際的動向としてのESD(持続発展教育)と関連させて,科学教育を踏まえた学校防災を提示する。 また,これまでの研究成果をインドで開催される7thGeoSciEd(国際地球科学教育学会)で発表し,南アジアや西アジア,さらにはアジア以外の国際社会においての日本の防災教育の現状と取組を広く紹介し,批評を仰ぐ。近年では,自然災害への防災・減災は国際的な共通の課題となりつつある。科学的リテラシーの育成と関連して,今後,日本がどのような貢献が可能かも探る。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度,10月に上越教育大学から滋賀大学に急遽,異動することになり,予定していた海外研究授業がとりやめになったり,購入品の手配することがでなくなったりした。 前年度実施できなかった東~東南アジアを中心とした研究授業等を実施する。
|