研究課題/領域番号 |
24300272
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
長 幸平 東海大学, 情報理工学部, 教授 (90256199)
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研究分担者 |
福江 潔也 東海大学, 情報理工学部, 教授 (90147158)
内田 理 東海大学, 情報理工学部, 准教授 (50329306)
寺田 一美 東海大学, 工学部, 講師 (30547998)
竹村 憲太郎 東海大学, 情報理工学部, 准教授 (30435440)
佐藤 俊明 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (50567146)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地球環境 / リモートセンシング / 震災復興 / 環境教育 |
研究実績の概要 |
1.観測機器の調整:可搬式分光放射計の測定データの比較検証、定点カメラ、濁度計等のメンテナンスを行った。 2.協力高校等との調整・交流:これまでに協力関係を築いた仙台工業高校、気仙沼向洋高校教員、生徒らと適宜、情報交換を行い、3月には合同で現地調査を実施した。また、現地調査の際には、女川町復興まちづくり情報交流館、南三陸町役場、南三陸ポータルセンター、名取市「閖上の記憶」等を訪問し、情報収集・交換を行った。 3.環境観測:これまでに選定した各地の定点観測地点で、年2回(8月と3月)、研究提案者らと協力高校の教員、高校生が合同で観測実験を実施した。広域環境の把握には、NASAの衛星に搭載されている中分解能光学センサMODISの画像を使用し、詳細な土地被服状況の把握には、台湾のFORMOSAT-2衛星および米国のLandsat-8衛星にそれぞれ搭載されている高分解能光学センサの画像を使用した。時系列衛星画像の解析から、土地利用状況の変化、環境再生状況等の評価を実施した。MODISの正規化植生指標(NDVI)の時系列解析により、農地の復興状況を定性的に捉えられることが確認できた。 4.観測データの共有:撮影した現地写真、衛星画像、各種観測データは、高校生を含む研究参加者がサーバーにアップし、関係者で共有し、情報交換した。また、取りまとめた現地写真、衛星画像、その他の観測データの表示方法、Webの利用について改良を行っており、徐々に成果が上がっている。ただ、被災状況の提示には、住民感情等に細心の注意を払っている。 5.学会発表等:内外の関連学会、シンポジウム等で、本研究の取り組み、これまでの成果を発表した。国際シンポジウムでは、被災地の環境再生状況調査の取り組みへの関心が高く、多くの質問を受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災は、その被害の規模が大きく、地域によって環境再生・復興のスピード、変化の幅が大きく異なっている。このため、定点観測する地点、観測対象の見定めが難しく、せっかく毎回継続観測していた場所が、次に来たら大規模工事で立ち入れなくなっているケースもあった。一方、何年経っても復興する様子が見られない場所もあった。そうした中で、本研究も4年目に入り、定点観測の地点もほぼ固定され、何の変化に注目することがその地域の再生状況の指標になりうるかが分かってきた。このため、昨年度までは丸4日かかっていた調査が、今年度はほぼ3日で終えることができるようになった。 本研究では現地写真の撮影が重要であるが、毎回、復興によって周囲の状況が変わる中で、変化の無い背景の山並みなどを基準に撮影することで、定点観測の画像の時系列比較がしやすくなった。また、写真の整理方法、Webへの掲載方法についても試行錯誤が功を奏し、見やすい仕組みが構築できるようになった。最終年度に向け、調査結果の取りまとめ方、提示方法がほぼ確立できたことになり、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、28年度で最終年度を迎えるが、これまで、毎年2回の現地を定期調査する中で、いくつかの重要な事項が確認できた。 まず、震災後の環境再生・復興の速度、アプローチに同じ宮城県でもかなりの地域差があるということである。気仙沼では、大規模は埋め立てが進み、その上に住宅用のビル群が建設され始めている。一方、名取市閖上地区は、埋め立てた上に家を再建する計画であるが、その進捗にスピード感はない。こうした地域差の比較は、環境再生を考える上で需要である。 今回の研究では、衛星画像と現地写真の対比を1つの特徴としているが、その研究手法もこれまでの4年間で確立してきた。調査前に最新の衛星画像を取得し、以前と大きく変化しているところを現地調査することで、実態把握が的確に行えるようになった。前回、森林で覆われていた山の山肌が露出していたため、調査したところ、埋め立て用の採石場になっていることが判明したこともあった。また、衛星画像から算定した正規化植生指標が環境再生の指標として有効であることも確認できた。現地調査の写真もGPSの記録だけでは、目まぐるしく変化する現地の様子を時系列比較するのに不十分であることを判明した。このため、試行錯誤の結果、画角を広めに撮影したり山並を背景に入れて撮影する手法を確立してきた。 今回の震災調査の結果をまとめ、公開することは重要であるが、それ以上に、今回の調査で試行錯誤してきた環境再生調査の手法をしっかり記録することが重要である。おりしも、4月中旬に熊本で大地震が発生した。研究者らが所属する東海大学は、熊本に阿蘇キャンパス、宇宙情報センター等を展開している。研究者らは、すでに、この地域の災害調査を開始している。本研究の主対象はあくまで東日本大震災であるが、そこで構築した調査手法の検証という意味からも、熊本の環境再生調査を並行して実施していく考えである。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年に出産した教員が、育児の関係で2015年度、現地調査に出向けなかった。その分の出張費を次年度に繰り越した。なお、出張に出向けなかった教員の調査項目は、現地調査に参加した同研究室の学生が対応した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に繰り越した予算は、最終年度の研究成果の学会発表、および現地調査の日数延長等の出張費に活用する計画である。
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