研究概要 |
本研究の目的は,グローバル社会に対応した国際的な視野を持つ技術者倫理教育のための事例教材がないことを鑑み,日米欧の各地域の工科系学生(および,可能であれば技術者)の意思決定のプロセスにおける共通点・相違点の比較を通して,グローバル社会における技術者倫理の行動規範の原案作成と,これらを学ぶことのできる事例教材開発を目指すものである.この目的の達成に向け,平成24年度には: 1)日・米・オランダの技術者倫理教育に関する科目のシラバス,および,各国における代表的な工学系学協会の倫理綱領の収集・分析,および,それを踏まえての,各国の技術者倫理(教育)の特色や重視される価値の抽出に向けた検討 2)事例「ソーラーブラインド」の英語翻訳版の作成,および,事例「ギルベイン・ゴールド」を用いた,倫理的意思決定の差違に関する調査 を行なうことを計画した. この計画に対し,先ず,技術者倫理教育に関する科目のシラバスや工学系学協会の倫理綱領の収集・分析に関しては,各種シラバス・倫理綱領を集め,分析を実施した. 次に,事例「ソーラーブラインド」英語翻訳版の作成については,同事例の日本語版(オリジナル版)を製作した東映京都撮影所の協力を得て,日本語音声を英語に吹き替えた英語吹替版を製作し,海外研究協力者らに配布した.協力者らが彼らの担当科目において同事例を用いられるようにした.事例「ギルベイン・ゴールド」を用いた倫理的意思決定の差異に関する調査については,予備調査として,「日本的」「アメリカ的」な価値観についてのアンケート調査を実施した.実際の調査委については,学年歴の違いにより,海外研究協力者らの担当科目における調査は実施できなかったが,研究代表者・分担者・連携研究者らの担当科目において同事例を用いた授業を実施し,分析・検討のためのデータを得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画の内,1)技術者倫理教育に関する科目のシラバスや工学系学協会の倫理綱領の収集と分析については,概ね予定通り行なうことができた.また,2)事例「ソーラーブラインド」英語翻訳版の作成と,同事例を用いてのE-ラーニングシステム「Agora」上での倫理的意思決定についての実証的比較調査の実施については,事例の英語翻訳版を予定通り作成した.実証的比較調査については,予備調査として,「日本的」「アメリカ的」な価値観についてのアンケート調査を実施した.
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今後の研究の推進方策 |
研究の進捗状況はこれまでのところおおむね順調であり,したがって,今後の研究もおおむね当初の研究実施計画に沿って推進する予定である.具体的には,事例「ソーラーブラインド」「ギルベイン・ゴールド」を用いた実証的比較調査・分析を行ない,平成26年度末のワークショップを経て,平成27年度に成果を取りまとめ,公開する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費は,昨年度未使用額(¥18,137)を併せて¥1,618,137(内,補助金分は¥300,000)であるが,旅費として約100万円,物品費として約20万円,人件費・その他として約40万円を使用する見込みである.海外研究協力者との打合せに海外出張を予定しており,昨今の円安情勢から,旅費は予定額を超える可能性がある.
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