本研究の目的は,これまでに研究代表者らが開発してきた微生物機能により固化する保存材料の高度化を行い,自己修復機能を持つ環境保全型のカルシウム系保存材料を新たに開発することである。3年目の最終年度となる平成26年度は,(1)保存材料の室内析出・固化試験,(2)保存材料を用いた供試体の作製,(3)保存材料を用いた供試体の力学特性の評価,(4)保存材料の有効性に関する評価,の4項目について実施した。 得られた主な成果は,以下に示すとおりである。 (1)保存材料の室内析出・固化試験:試験管を用いて,微生物機能により固化後に炭酸カルシウムあるいはリン酸カルシウム化合物となる保存材料の室内析出・固化試験を実施した。 (2)保存材料を用いた供試体の作製:対象とする土(地盤)として主に砂質土を使用し,土粒子間の間隙に各種カルシウム化合物を析出・固化させることによって保存材料を使用した供試体を作製した。 (3)保存材料を用いた供試体の力学特性の評価:炭酸カルシウムあるいはリン酸カルシウム化合物を保存材料とした砂質土の供試体を用いて,力学を中心とした各種の室内試験を実施した。また,保存材料の析出・固化のメカニズムを明らかにするために,理論的な検討を実施した。 (4)保存材料の有効性に関する評価:新たに開発したカルシウム系保存材料の有効性について検討するために,保存材料による処理後の物性値を処理前の物性値と比較することにより,土(地盤)に対する保存処理の効果について評価を実施した。その結果,保存材料が機能性,安全性,環境保全性,自己修復性,経済性などの多方面において優れていること,また,特に砂質土に対して有効であることが確認された。
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