研究課題/領域番号 |
24300316
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館 |
研究代表者 |
今津 節生 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部・博物館科学課, 課長 (50250379)
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研究分担者 |
楠井 隆志 福岡県立アジア文化交流センター, 展示課, 主任研究員 (30446885)
鳥越 俊行 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部・文化財課, 主任研究員 (80416560)
丸山 士郎 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部・博物館教育課・教育講座室, 室長 (20249915)
浅見 龍介 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部・調査研究課・東洋室, 室長 (30270416)
神庭 信幸 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部・保存修復課, 課長 (50169801)
和田 浩 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部・保存修復課・環境保存室, 室長 (60332136)
岩佐 光晴 成城大学, 文芸学部, 教授 (10151713)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | X線CTスキャナ / 構造調査 / 天平彫刻 / 三次元プリンタ / デジタル複製品 |
研究概要 |
平成25年度の研究では、十大弟子像4躯(須菩提、舎利弗、目けん連、富楼那)について検討を行った。心木の構造は、これまで考えられていたよりも複雑で、多くの構造上の工夫がみられる。これまでの調査で、頭体幹部には木目の細かな木材、腕などには木目の粗い木材と使い分けていることが判明した。今後、詳しい木組み構造や木材の組み合わせ順序を検討する。また、必要に応じて木組み構造のデジタル複製品を作成して詳細に検討する。これまでの調査で、心木には塑土が付着しておらず、塑土を掻き出した後にあらためて入れたものであることが確認できた。複雑なデータ処理を必要とするが、脱活乾漆像の裏面を反転することにより、塑像の形状を復元することが可能であることが判明した。布張り技法については、これまでの調査で、断面および裏面の観察とデジタル複製品の作成によって麻布の厚さや布の大きさ、布目の密度を検討することができた。今後は、諸像によって制作工程や麻布の密度に違いがあるのかどうかについて検討を進める必要がある。乾漆技法については、これまでの調査で、塑土を掻き出すための窓の位置、大きさ、縫い合わせの状況が判明した。解析結果を再確認するために、興福寺国宝館に所蔵されている原像の調査を実施した。原像を肉眼で再調査することによって、解析に矛盾がないかを検証する。また、破損などによって構造・技法がある程度知られる脱活乾漆像(東京国立博物館所蔵・東京芸術大学所蔵)についてもCTスキャナによる構造解析調査を実施した本研究によって、日本彫刻史上に阿修羅像をはじめとする興福寺の天平彫刻の作風を、科学調査を踏まえて正確に位置づけることができる。本研究の成果は日本彫刻研究の新しい研究基盤になることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
奈良興福寺の十大弟子像4躯、八部衆像5躯の像内の高精細三次元データを美術史・工芸史・修復技術・文化財科学・博物館学の専門家が集まって分析し、奈良時代の脱活乾漆像の構造及び技法、修復履歴を明らかにした上で、あらためて彫刻史上の作風的位置づけを行うことを目的として研究を実施している。研究は年次計画にそって実施しており順調に進展している。本研究において、諸像の構造や修理履歴・制作技法等で新発見が相次いでいる。観察結果の新知見を検証するために、三次元模型を製作して検討している。CT画像の解析は当初計画にそって順調に進んでいる。すでに2対の像については研究雑誌にデータ解析結果の報告をしている。また、解析結果を裏付けるために心木の復元制作を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で得られた膨大な写真やデジタルデータが集積されつつある。この膨大なデータと研究成果を公開するために、論文・報告の編集作業を進めている。今後、本研究の成果をわかりやすく公開するために写真図録の出版を計画している。今年度は編集作業・出版費用など、図録出版に向けた課題を解決する必要がある。また、解析結果を可視化した心木の実物大模型を作成して研究結果を実証する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、奈良興福寺の国宝 阿修羅像をはじめとする十大弟子像4躯、八部衆像5躯の像内の高精細三次元データを解析して、奈良時代の脱活乾漆像の構造及び技法、修復履歴を明らかにしてきた。数多くの貴重な画像データを蓄積できたので、最終年度に成果報告書の刊行を計画している。これまでに蓄積した1000枚を超える膨大な画像データと観察結果を掲載した成果報告書を刊行するために、最終年度に編集・印刷を行うための経費として次年度に繰り越した。 本年度の繰越金は、成果報告書の編集・印刷に使用する計画である。本研究の最終年度である平成26年度に、これまでに蓄積した1000枚を超える膨大な画像データと観察結果を掲載した成果報告書を刊行する。平成26年度には編集・印刷を計画している。
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