研究概要 |
本研究は,紀伊半島南端部に近い和歌山県串本町橋杭岩の波食棚上に分布する巨礫の地形・地質学的研究から,歴史時代に経験した津波をはるかに上回る規模の津波によって巨礫が運搬された可能性を指摘した我々のこれまでの研究をもとに,完新世後半に南海トラフで発生したと推定される未知の巨大津波に関して,関連する地形や地質学的情報から,その発生時期,津波浸水域,波源モデルなどについて具体的に明らかにすることを目的とするものである。さらに,低角沈み込み帯における,海溝に並行して発達するプレート内分岐断層とメガスラストとの連動などを考慮した新たな連動型地震発生モデルの再構築を試みることによって,将来の巨大津波の発生可能性について検討することを目指している。 平成24年度に実施した研究は、橋杭岩に分布する巨礫の体積および形状を計測するため,地上レーザープロファイラーを用いた精密測量を実施した。その結果、これまでは簡易測量による幾何学的に単純化された巨礫の体積を求めていたが、レーザー測量によりきわめて正確な数値を求めることができた。津波巨礫(石英安山岩)を構成する鉱物(石英など)から,BeやAlなどの放射性核種を抽出し,宇宙線照射年代測定によって津波発生年代(礫の移動年代)を限定する研究は、国立公園であることから、調査許可の申請に時間がかかり、次年度に調査を実施することにした。そのため、今年度は、次年度以降行う予定だった津波堆積物のボーリング調査を、串本古座高校グラウンド敷地を借りて先行して実施した。数本のボーリングコアから明瞭な津波砂礫とラグーンを構成する堆積物の互層が7~8層以上みつかったほか、最も深部の地層から鬼界アカホヤ火山灰(7300年前)が見つかったことから、過去7000年間の、和歌山県南部を襲った巨大津波を正確に復元できる可能性がでてきたことは、今年度の最大の成果である。
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