研究課題/領域番号 |
24300321
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
苅谷 愛彦 専修大学, 文学部, 教授 (70323433)
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研究分担者 |
松四 雄騎 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90596438)
高岡 貞夫 専修大学, 文学部, 教授 (90260786)
原山 智 信州大学, 理学部, 教授 (60293536)
西井 稜子 独立行政法人土木研究所, その他部局等, 研究員 (00596116)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 地すべり / 岩盤重力変形 / 地形変化 / 古環境 / 年代測定 / 第四紀 / GIS |
研究実績の概要 |
大規模地すべりに関する十分な第四紀地形学・地質学的資料が得られていなかった南アルプスを重点調査した。特に,安倍川上流では研究プロジェクト構成員全員で基盤岩の重力変形や崩壊土砂の流送状態を観察し,形成機構を討論した。また宇宙線生成核種や放射性炭素を用いた年代測定試料を採取した。このことは大規模地すべり現象の発達-消滅過程の解読に際し,研究者が有すべき問題意識や判読術を共有するのに効果的であった。また南アルプス南部における海溝性巨大地震による大規模地すべりの発生機構を論じるための新資料が得られた。一方,初年度から調査を進めた仙丈ヶ岳薮沢大規模地すべり地では追加的な地質記載や年代測定試料の採取を行った。新規資料が先行研究に付加され,同地すべり地の発達史について全容がおおむね明らかとなった。 北アルプスでは大規模地すべり堆積物と氷河堆積物の比較や年代測定試料の採取,線状凹地の陸水採取等を行った。特に,立山では氷河堆積物の下位から岩石なだれ(地すべり)堆積物と思われる粗粒岩屑層が発見された。氷河堆積物に覆われたこのような地すべり堆積物は日本では知られておらず,新たな検討課題がもたらされた。上高地では物理探査に基づく地すべり堆積物の拡散過程や,陸水の珪藻分析に基づく線状凹地の発達過程が検討された。 中央アルプスでは木曽谷で地形・地質調査を行った。数地点で岩屑堆積物や被覆テフラ層を見いだしたが,それらによる大規模地すべりの発達史の解明は今後の課題となった。 研究成果は学会誌や諸学会で公表した。特に,日本地理学会2015年春季大会では,研究プロジェクト構成員が中心となりシンポジウム『地理学からみる日本アルプスの大規模地すべり』を開催し,成果を発表した。今後も構成員各自の論文投稿のほか,2015年夏に開催される第19回国際第四紀学連合大会(INQUA)において英語発表がなされる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度のみならず,3年間を通じてほぼ研究実施計画どおりに現地調査や室内調査(分析)が進行した。これにより有用な研究資料が多数集積するのと同時に,これまでになかった山地地形発達論や地すべり地形形成論を展開することができた。研究成果も,ほぼ計画どおりに公表できたか,公表に向けた準備が整いつつある。 3年間の研究遂行により,日本アルプスのうち北アルプスと南アルプスでは新規データが相当集まった反面,中央アルプスでは当初の見込みほどの成果が得られなかった。この山域には大規模地すべりが少ないこともあるが,大規模地すべりと予想して現地調査を実施したものの実際は流水の関与した土石流堆積物であることが判明した事例があったり,林道・登山道の壊滅的破壊により調査地へのアクセスが困難になったために研究を断念せざるを得なかったりした事例があった。
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今後の研究の推進方策 |
航空機を利用した空中からの地形撮影や観察を平成26年度に実施予定であった。しかし悪天候等のために達成できなかった。平成27年度は北アルプスや南アルプス南部の大規模地すべり地を対象にこれを行う。得られた成果は航空レーザ測量による高精細地形標高モデル陰影図や既存の空中写真,現地踏査等の資料とも比較検討し,地形学図の作成や研究総括,成果公表のために有効利用する。 成果のとりまとめと公表を精力的に行う。第19回国際第四紀学連合大会(INQUA)の他に,日本地球惑星科学連合大会や日本地理学会等での発表を行う。また国際誌にもすでに論文を投稿しており,今年度中に受理となる見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に北アルプス・南アルプスの地すべり地形を空中写真撮影する目的で松本空港から軽飛行機を2回チャーターする予定であった。しかし悪天候のため2回とも中止した。その後も飛行の機会に恵まれず,未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
空中写真撮影は平成27年度に行うこととし,未使用額は軽飛行機のチャーター代,現地への出張旅費及び撮影機器消耗品の購入経費に充てることとしたい。
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