研究課題
本研究の目的は(1)日本社会を対象としたADI指標(地理的剥奪指標)の提案と、(2)小地域(近隣地区レベル≒町丁字スケール)におけるADIと健康指標との関連性を近隣環境要因の媒介に着目した評価、の2点である。ADIについては、貧困・剥奪に関連した国勢調査の小地域統計資料を利用して算出し、各種の健康指標との関連性を分析した。結果として、主観的健康感やがんの生存率など、各種の健康指標の悪化と地理的剥奪の高さとの関連性を報告し、その背景となる近隣環境との関係を考察した。これらを通して、健康の地理学における学際的研究の推進とともに、日本における小地域統計を利用した統計の高度利用について検討した。最終年度では、各研究分担者を中心に、国際誌を中心とした学会誌への論文発表や学会での報告を通して、成果の社会的発信に注力した。総じて、ADI指標を評価軸として健康指標との様々な関連が報告され、近隣の社会経済的な環境特性による居住者の健康への影響が示唆されたが、この関連を媒介する可能性のある買物環境や運動環境などのより具体的な環境指標については、ADIとの関連が必ずしも明確ではなかった。最終的に結果を総括し、健康の社会格差が地理的に表出する事実に基づいて、地理学者と健康科学領域の研究者の共同研究が果たす意義を議論した。とくにGIS環境の発達や多様な地理情報が利用可能となった現状では、従来よりも詳細な空間と健康の関連性が分析可能であり、それを一層推進する統計利用の体制や分析方法論の発達が期待される。ただし、現時点では地理的な環境そのものも変化する存在であり、それを考慮した動的な健康の地理的格差の分析は、今後に残された課題である。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)
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