研究課題
消化器がんの間質組織には慢性炎症による微小環境が形成され、それが発がん促進に作用すると考えられている。また、炎症性微小環境では発がん抑制に作用する「腫瘍免疫」が抑制される可能性も指摘されている。本課題研究は、COX-2/PGE2経路により誘導される炎症反応に依存的に胃がんを発生するマウスモデルであるGanマウスを用いて、炎症性微小環境形成における免疫反応の関与、および腫瘍免疫の制御による発がん機構について明らかにすることを目的として実施した。Ganマウス腫瘍組織ではTGF-beta発現が上昇しており、FoxP3陽性の制御性T細胞(Treg)の浸潤が認められたことから、腫瘍免疫が抑制されている可能性が考えられた。そこで、タモキシフェン(Tmx)投与によりTGF-betaII型受容体遺伝子を欠損できるGanマウスを作製してTmx投与実験を実施したが、多くの個体が投与後数週間で死亡したため胃がん症状の変化について解析が出来なかった。同様のマウスに野生型マウスから骨髄移植すると生存したことから、骨髄由来細胞でTGF-betaシグナルを遮断することが死因と考えられた。そこで、Tregを枯渇させる目的で、新生仔Ganマウスの胸腺摘出実験を実施した。その結果、胃がん症状が強くなる傾向が認められたが、同時に自己免疫性胃炎の誘発が認められた。さらに自己免疫性胃炎と胃発がんとの関係を明らかにするため、GanマウスとPD-1遺伝子欠損マウスとの交配実験を行ってPD1-/- Ganマウスを作製した結果、自己免疫性胃炎が高頻度に発生し、それに対応して胃がん発生が有意に促進された。以上の研究成果により、TGF-betaによる腫瘍免疫制御を明らかにすることは出来なかったが、自己免疫性胃炎がCOX-2/PGE2依存的な胃炎と同様に胃がん発生促進に作用する微小環境を形成することが明らかとなった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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