研究課題
癌の発生と悪性化に密接に関連する「小胞輸送(ユビキチン依存性小胞輸送系:ESCRT)」の生物学的意義と分子機構の解明を目的として、①遺伝子改変マウスを用いた解析により、ESCRTによる受容体制御の異常が発癌と悪性化を誘導するか?を検討する。また、②細胞株を用いた検討により、炎症やオートファジーに異常を来たし発癌を誘導するか?を調べる。さらに、③炎症の遷延化によって発がんに導くか?を検討する。ESCRT輸送系を介した発がんと悪性化形質制御の解明を行い、④輸送標的を同定することにより、新規癌治療と予防法開発のための基盤となるデータを収集することを目的とする。 平成25年度は以下の実績を得た。①「ESCRT欠損マウスを用いた発癌モデル」Hrs肺癌モデルとして、条件付きHrs欠損マウスをLSL-KrasG12Dマウス、SPC-TetOマウス、rTTAマウスと交配し4種交配による個体作成を試みているが、今のところ4種全て陽性の個体は得られていない。交配を継続するが、念のため次年度はアデノウイルスによるCre発現系を同時に試みる。この方法により、次年度は肺癌発生が確実に得て解析を行う予定である。②「ESCRT標的タンパクの同定」頭頸部癌組織を精製し、VPS35を同定した。今後VPS35が輸送するタンパク質を同定しESCRTとの関連を解析する予定である。③「輸送系に会合する脱ユビキチン化酵素による発がん解析」ESCRTに会合するAMSH-LPについて、発がんにおける役割を解析した。AMSH-LP欠損マウスは正常に生まれ、特に明らかな症状を認めないことから、p53ヘテロ欠損マウスと交配し長期間経過観察を行った。その結果、生後18ヶ月以内において生存率に大きな差異はなかったが、欠損マウスの発がん率は高い傾向が観察された。
2: おおむね順調に進展している
Hrsマウスを用いた発がん解析ついては4種交配であるため個体作成にいたっていないが、AMSH-LPマウスの解析は予想以上に順調に進んでいる。蛋白精製についても順調であり、概ね順調な進展である。
4種のマウス交配については、アデノウイルスによるCre発現系を採用することで、確実に発がんする方法を選択する。
予定している4種マウス交配による個体作成が遅延したため。アデノウイルスCreを購入し、新たな解析を行う。
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PloS ONE
巻: 8 ページ: e62002
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Biochem Biophys Res Commun.
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