研究課題/領域番号 |
24300327
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
千葉 奈津子 東北大学, 加齢医学研究所, 准教授 (50361192)
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研究分担者 |
渡邊 利雄 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (60201208)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | がん / 家族性乳がん / 中心体 |
研究概要 |
家族性乳癌原因遺伝子BRCA1は、変異により乳癌、卵巣癌を引き起こす癌抑制遺伝子で、近年は難治性乳癌のTriple negative乳癌との関わりが注目されている。BRCA1はBARD1とヘテロダイマーを形成し、DNA修復や中心体制御に関与する。我々は、プロテオミクス解析によりBARD1に結合する新規分子Obg-like ATPase 1 (OLA1)を同定し、その機能を解析し、OLA1が中心体制御や細胞質分裂で重要な機能を担うことを明らかにした。本研究では、OLA1とその関連分子の中心体や細胞質分裂制御機構と癌抑制機構を解析し、さらにノックアウトマウスの作製により、個体レベルでの機能と発癌メカニズムへの関わりも解析する。また、臨床検体でも解析し、癌の診断や治療効果予測のバイオマーカーや治療の分子標的としての可能性を探索する。 OLA1はBARD1のC末端、BRCA1のN末端、中心体の主要な構成因子であるg-tubulinと直接結合することが明らかになった。また、OLA1の乳癌細胞株由来の変異体ではBRCA1との結合能が消失し、中心体の制御能が障害されることが明らかになった。さらに、BRCA1の家族性乳癌由来の点突然変異で、OLA1との直接結合能が著しく低下することも明らかになった。また、OLA1との発現抑制による中心体の増加が中心体の断片化と過剰複製によることも明らかになり、OLA1の機能の破綻が発癌メカニズムに大きく関与することが示唆された。 また、ホモOLA1遺伝子欠損マウスは、胎生期に発育障害を起こすことが明らかになった。また、ヘテロOLA1遺伝子欠損マウスでは、脾臓に腫瘍を形成することが明らかになった。 さらに、BRCA1、BRCA2に遺伝子変異のない、家族性乳がん家系についてOLA1遺伝子の有無を解析したが、変異は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞学的解析により、OLA1の中心体制御能と発癌との関わりと明らかにすることに成功し、これまでの成果をMolecular Cell誌に発表した。これに関してはプレスリリースも行った。また、遺伝子改変マウスによる個体レベルでの解析も進行し、OLA1の発現の低下するヘテロノックアウトマウスでは、発がんを来すことも示唆された。さらに、臨床検体を用いた解析も行い、論文作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、OLA1が中心体キナーゼであるAurora Aと相互作用することを明らかにしたが、Aurora Aとの相互作用が消失するOLA1変異体も同定した。この変異体が中心体制御能に異常を来すことから、OLA1の機能における Aurora Aの重要性が示唆される。Aurora A によるOLA1の制御機構を明らかにして、OLA1のがん抑制能におけるAurora Aの重要性も解析する。 また、OLA1はATPase活性をもつが、OLA1のATP結合部位の変異体が中心体制御能に異常を来すことを明らかにした。この変異体を用いて、OLA1のATPase活性の中心体制御能での機能を明らかにする。また、多数作製した、OLA1のリン酸化やアセチル化の候補部位の変異体のそれぞれ1つに中心体制御に異常を持つ変異体を明らかにした。よって、この部位がリン酸化やアセチル化を受けるかどうかを解析し、その制御機構を解明する。リン酸化候補部位についてはAurora Aとの関わりも含めて解明する。 さらに、OLA1の発現抑制で、細胞質分裂の障害が引き起こされるため、その分子メカニズムも解明する。また、OLA1新規結合分子RACK1の中心体制御、細胞質分裂制御機構を明らかにする。 また、OLA1のノックアウトマウスの発育異常や脾臓における発がんのメカニズムを解明し、臨床検体を用いて、OLA1の変異や発現量を解析し、予後や薬剤感受性などとの関連を明らかにする。
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