研究課題/領域番号 |
24300330
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高倉 伸幸 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (80291954)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 癌 / 血管新生 / 壁細胞 / ニッチ |
研究概要 |
近年、血管の機能として、組織に酸素や養分を運搬するという基本的な機能に加え、幹細胞の維持や自己複製に関与するという、いわゆる血管ニッチの概念が徐々に証明されつつある。これまで我々は、自己複製中のがん幹細胞を識別できるマーカー分子を発見し、がん幹細胞は、血管新生抑制剤に抵抗性を示す、がん組織の周囲の成熟血管近傍に局在することを解明し得た。臨床的に問題視されている、血管新生抑制剤投与後のがん細胞の浸潤が、この腫瘍周囲の血管ニッチからのがん幹細胞から誘導されていることが予想される。そこで本研究では、がん幹細胞の生態学的適所の破綻による幹細胞性喪失の誘導をはかることを目的とし、腫瘍周囲の血管がいかに成熟化するのか、その分子メカニズムの解明をおこなってきた。これまでに得られた腫瘍血管の成熟化にかかわることが判明したL-Aについて、phalanx型の成熟内皮細胞への分化において発現が認められる、可溶型Flt1受容体(VEGF受容体)の発現に関わるかを検討したが、sFlt1の発現には影響を与えなかった。一方、腫瘍血管をL-Aで刺激した際に、血管内皮細胞同士の接着に関わるVE-Cadherinが内皮細胞同士の間に濃縮して、血管細胞同士の接着を強めることが判明した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)において、L-Aの受容体を発現させることで、L-Aの機能解析を試みたが、受容体発現が困難であり、本年度、その受容体の機能解析まで終了することはできなかった。しかし、L-Aの受容体ノックアウトマウスに形成させた腫瘍では腫瘍内の血管の成熟化がL-Aでは誘導できないことが判明した。一方、腫瘍内での単球の壁細胞への分化については、再現が困難であり、当研究は途中で中止した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
L-Aの血管成熟化に対するメカニズムの解明があと少しで終了できる予定である。順調に計画はすすんだと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
骨髄単核球の壁細胞分化については、再現が困難で途中で中止した。一方、L-Aの血管成熟化に対する研究が新たに発展した。今後も引き続き腫瘍血管の成熟化とがん幹細胞の関係について詳細に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
一部の実験がマウス交配の遅れで実施できず翌年に繰り越しした。 遺伝子改変マウスの交配を行ない、L-Aによる効果を確認する。
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