研究課題/領域番号 |
24300332
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
折茂 彰 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70275866)
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研究分担者 |
堀本 義哉 順天堂大学, 医学部, 助教 (40424246)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | CAFs / 癌浸潤・転移 |
研究実績の概要 |
癌の遠隔臓器への転移は癌患者の死亡率の90%に起因するが、そのメカニズムは明らかでなく、転移を有効に治療することは極めて困難である。近年、癌微小環境が癌浸潤・転移に密接に関与し重要な役割を演じていることが明らかになった。 申請者はこれまでに癌微小環境の主要な構成細胞である癌内繊維芽細胞(carcinoma-associated fibroblasts; CAFs)に焦点をあて研究を進め、乳癌の浸潤・転移を促進する分子機構を明らかにしてきた。
申請研究では、CAFsで誘導されるヒト乳癌転移の分子メカニズムをより詳細に解明しその治療標的を明確にし、癌細胞およびCAFsの両方を標的とする癌浸潤・転移に対する新規の診断や治療の開発に役立てることを目標にした。 申請者はCAFsとヒト乳癌細胞を免疫不全マウスに共移植後に成長した癌塊より癌細胞を抽出した。CAFsとinteractionした癌細胞は癌化の過程で、細胞接着能を亢進し浸潤能や転移能を顕著に促進していた。この結果は、CAFsを含めた癌微小環境が癌細胞に上皮間葉移行を誘導し、癌細胞の浸潤・転移能を促進するという現在主流とされる考えと反するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請研究では、CAFsの乳癌細胞の浸潤や転移における影響を、in vitroおよび動物モデルを使った実験にて検討することを目的にした。また、CAFsが癌細胞に上皮間葉移行を誘導し、かつ遠隔臓器で間葉上皮移行を起こしている可能性を検討した。
結果として、CAFsより促進される乳癌転移は上皮間葉移行に依存していない可能性が示唆された。原因遺伝子やシグナル等に関していは今後の詳細な検討が必要であるが、上皮系の形態を示した乳癌細胞の浸潤・転移機構が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
癌細胞の遠隔転移は, ①原発巣から癌細胞の周辺組織への浸潤, ②血管内侵入(intravasation), ③血流内での生存, ④血管外脱出(extravasation), ⑤転移臓器でのコロニー形成(colonization)および増殖によるmicro-metastasis (微小転移)の形成および臨床的に検出可能なmacro-metastaticな転移形成までの複雑なステップを経て成立する。
原発巣での上皮間葉移行および遠隔臓器での間葉上皮移行は、癌細胞転移の中心的な役割をしていると信じられている。また、癌細胞が細胞接着能を維持したまま、クラスター形成し浸潤・転移するモデルも知られている。
今後はCAFsを中心とした癌微小環境がどのようにこれらの癌細胞の浸潤・転移形式に影響するのか、またその分子機構の解析が重要である。またこれらの研究の方向性は今後新規診断や治療の開発に有用であると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
in vitroの生化学的解析に時間を要したため、マウスを使用するin vivoの実験が遅延したため。
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次年度使用額の使用計画 |
同定された細胞接着因子群のshRNAを発現したCAFsと低転移性の乳癌細胞をマウスに共移植し、転移に対する影響を調べる。
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