研究課題/領域番号 |
24300338
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
前佛 均 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (90372820)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | C10orf11 / 乳がん / 内分泌治療 / 個別化医療 |
研究実績の概要 |
平成24年度までに行われた240例の乳がんタモキシフェン治療症例のgermline DNAを用いた網羅的遺伝子多型解析の結果、15個の遺伝子多型(SNP)がゲノムワイド有意水準を満たすレベルで、治療効果(治療後の予後)と関連を認めた。さらに追加サンプル222例を用いた検証実験の結果より、上記15 SNPのうち10番染色体上のC10orf11遺伝子については、2つの独立した乳がんサンプルセットにおいても再発のリスクと強く関連することが再現された(全検体を組み合わせた結果:log-rank P= 1.26 × 10(-10)、Hazard ratio = 4.51)。 C10orf11遺伝子は、メラノサイトの分化に関係している可能性が報告されているが、その機能はほとんど知られていない遺伝子である。正常組織における発現状況を検討したところ、副腎、肝において、比較的高い発現を認めたが、正常乳腺組織においては高い発現を認めなかった。また、同遺伝子の細胞増殖能への影響を検討するため、一過性強制発現系で同遺伝子を過剰発現し、MTT assayにて検討を行ったが、明らかな細胞増殖能への影響を認めなかった。さらにC10orf11遺伝子の発現抑制細胞を作成し、細胞増殖能の変化を検討するため、si-RNAオリゴを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノムワイド関連解析の結果、有意水準を満たすSNPが複数同定され、さらに検証試験の結果、1 SNPで再現性が確認された。その結果、1遺伝子(C10orf11遺伝子)に焦点を当てて解析を進めることが可能となった。当初の予定よりeffectの強いSNPが同定され、臨床有用性の高い結果が得られる可能性が強まったため。
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今後の研究の推進方策 |
効果的なsi-RNAのオリゴ配列を決定し、C10orf11発現抑制系を用いて細胞増殖抑制能への影響を検討する。C10orf11タンパクの細胞内局在、タンパク定量化のため特異抗体を作成し、結合タンパクなどについても検討をすすめる。結合タンパクの機能を熟考し、たとえばリン酸化酵素などであれば、関係しうる代表的細胞内シグナルなども考慮しながら、内分泌療法反応性との関連について、そのメカニズムを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は平成25年12月までに乳がん内分泌療法反応性関連遺伝子について十分な遺伝子発現抑制効果を有するsi-RNA オリゴおよび同遺伝子産物に対する特異的抗体を作成し、平成26年3月末までに細胞増殖抑制効果を確認し、その抗体が内在性のタンパクを認識する予定であった。しかしsi-RNAオリゴについては、上記期間までに効果的に目的遺伝子の発現を抑制しうるものがデザインできず、また特異的抗体については抗体作成に想定外の時間を要したため。
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次年度使用額の使用計画 |
効果的に目的遺伝子の発現を抑制するsi-RNAを設計・作成するのに約27万円を費やし、さらに約140万円をかけて特異的抗体を用いた免疫細胞染色および免疫組織染色を行う計画とした。
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