研究課題/領域番号 |
24300339
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石岡 千加史 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (60241577)
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研究分担者 |
加藤 正 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (50382669)
西條 憲 東北大学, 大学病院, 助教 (70636729)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | がん / 分子標的治療薬 / 創薬 |
研究概要 |
酵母PI3K機能スクリーニング系による化合物ライブラリーからのPI3K阻害剤の探索研究から偶然発見したHDAC阻害剤のロミデプシン(FK228)とその類縁体について、これらがPI3K/HDAC2重阻害剤であることを発見した。そこで平成25年度はPI3K/HDAC2重阻害剤の創薬を目指し、 1.既合成または新規合成のFK228類縁体について、PI3K/HDAC2重阻害剤作用による殺細胞効果のメカニズムが有効であるがん細胞側の特徴を明らかにする研究に取り組んだ。 その結果、前立腺癌や大腸癌に効果があること、とりわけ市販の分子標的薬が不応のKRAS変異を有する大腸癌細胞にも効果があることが明らかになった。 2.耐性因子を探索する研究として、耐性細胞株の樹立やPI3K/AKT経路の遺伝子変異探索に取り組んだ。FK228類縁体の耐性機序を明らかにするために、より耐性度の高い耐性株の作成に取り組んだ。また、耐性機構に関与する可能性があるp110αをコードする遺伝子PIC3CAをはじめ、PI3K/AKT経路の変異解析を行った。 3.より阻害活性の高い新規化合物を合成し創薬に向けての最適化に関する研究に取り組んだ。平成25年度と同様に、標的タンパクと化合物の構造活性相関の解析により、PI3K阻害活性がFK228や類縁体A5より強い新規類縁体A11を合成した。また、in vivoの抗腫瘍効果をマウスモデルで検証するためのFK228や類縁体A5およびA11を合成した。 4.in vivoの抗腫瘍効果をマウスモデル(前立腺癌細胞と大腸癌細胞を移植)で抗腫瘍効果を確認した。(西條、李)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.既合成または新規合成のFK228類縁体について、PI3K/HDAC2重阻害剤作用による殺細胞効果のメカニズムが有効であるがん細胞側の特徴を明らかにする研究に取り組んだ。 その結果、新知見として市販の分子標的薬が不応のKRAS変異を有する大腸癌細胞にも効果があることを明らかにした。 2.耐性因子を探索する研究として、耐性細胞株の樹立やPI3K/AKT経路の遺伝子変異探索に取り組んだ。FK228類縁体の耐性機序を明らかにするために、耐性細胞の樹立を試みたが耐性度の点で満足できる細胞は得られなかった。しかし、当初の計画どおり既存の細胞の耐性機構に関与する可能性があるp110αをコードする遺伝子PIC3CAをはじめ、PI3K/AKT経路の変異解析により耐性機構の解析研究は前進した。 3.より阻害活性の高い新規化合物を合成し創薬に向けての最適化に関する研究に取り組んだ。その結果、PI3K阻害活性がFK228や類縁体A5より強い新規類縁体A11を合成に成功した。 4.計画どおり、in vivoの抗腫瘍効果をマウスモデル(前立腺癌細胞と大腸癌細胞を移植)で確認できた。(西條、李)。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度(最終年度)は、当初の研究目的である1.PI3K/HDAC2重阻害剤作用による殺細胞効果のメカニズムを明らかにする。2.抗腫瘍スペククトルを明らかにし、耐性因子を探索する。3.PI3K阻害活性がより強い新規化合物を新規に合成し、最適化する。の3つをより明確にする。とりわけ、作用メカニズムの解明、細胞株を用いた耐性(または感受性)因子の解析、新規類縁体の合成とそのin vitro(マウスモデル)での抗腫瘍効果の確認について平成25年度同様に研究を推進する。 また、平成26年度は本研究で得られたPI3K阻害活性がFK228や類縁体A5より強い新規類縁体A11に関しては、非臨床試験に発展させるための文部科学省橋渡し研究加速ネットワークプログラム・シーズBに採択されたため、この研究費によって創薬に向けて化合物の規格決定や毒性試験に発展的に取り組む。平成27年度以降は、非臨床試験の完成と企業への導出または産学共同研究に発展させる予定である。
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