研究課題/領域番号 |
24300345
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
土原 一哉 独立行政法人国立がん研究センター, 臨床開発センター, 分野長 (00415514)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 肺腺癌 / 網羅的ゲノム解析 / キナーゼ阻害剤 / 分子標的治療 / RET |
研究概要 |
肺腺癌の治療成績向上には新規標的分子の同定とそれに対する特異的阻害剤の開発が必須である。蛋白質リン酸化酵素(キナーゼ)の多くは細胞の増殖・生存を制御し、特異的な阻害剤の開発も進んでいることから、分子標的として有望である。国立がん研究センター東病院の肺腺癌組織97例の全エクソン解析を行ったところ、既知のドライバー遺伝子であるEGFRに加え、すべての症例において何らかのキナーゼ遺伝子に既知および新規の変異が検出されることが明らかになった。これらキナーゼの中に新たな治療標的が含まれていることを期待し、変異によってがん細胞の増殖、生存、浸潤等が促進するものを同定し、さらに変異キナーゼに対する特異的阻害剤により、これらの生物学的特性が変化するかを検討し、新たな治療法開発、臨床応用への展開をめざしている。本年度はすでに解析が終わった臨床検体97例に加え、日本人肺腺癌から樹立された6細胞株の全エクソン解析及び融合遺伝子解析を行った。うちLC-2/ad株においてRET遺伝子を含む10番染色体の逆位が同定され、同株ではCCDC6-RET融合遺伝子の発現が確認された。これは最近臨床検体でも発見された新規ドライバー遺伝子と同じものであり、同株がRET融合遺伝子を発現する肺腺癌のモデルとなることが期待された。培養細胞実験系、マウス移植腫瘍実験系においてRETのキナーゼ活性を阻害するバンデタニブは顕著な増殖抑制、殺細胞効果および抗腫瘍効果を発揮した。国立がん研究センター東病院をはじめとする臨床研究グループはRET融合遺伝子陽性肺がんを全国規模でスクリーニングしバンデタニブの効果を検証する第2相医師主導治験を展開しており、本研究はこの治療法のproof of conceptに相当するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床検体に追加して解析した細胞株エクソームのデータから最近同定されたドライバー遺伝子の異常を発見し、細胞株モデルで分子標的治療の有用性を示唆することができた。これに続く新たな変異遺伝子についてもエクソームデータからの抽出が完了し、うち3遺伝子については臨床検体で同定された変異を導入した発現実験系の構築が終わっており、第2年度以降に生物学的特性を明らかにする研究が実行できる。
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今後の研究の推進方策 |
RET阻害薬の分子生物学的作用機序、耐性獲得機序を解析し、進行中の臨床試験と連動して治療法開発を進める。新規変異キナーゼ及びその制御分子3遺伝子について特異的阻害剤による治療効果の可能性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
変異頻度の検証を目的とした追加300症例の解析に先立ち、細胞株ゲノム検索を行い標的分子の発見に成功したため、検証用臨床検体の解析が第2年度以降にくりこしとなったため。
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