研究課題/領域番号 |
24300346
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
後藤 功一 独立行政法人国立がん研究センター, 東病院, 科長 (90435719)
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研究分担者 |
梅村 茂樹 独立行政法人国立がん研究センター, 東病院, 医員 (80623967)
土原 一哉 独立行政法人国立がん研究センター, 早期・探索臨床研究センター, 分野長 (00415514)
石井 源一郎 独立行政法人国立がん研究センター, 臨床開発センター, ユニット長 (00270869)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 小細胞肺癌 / 全エクソン解析 / SNPアレイ / カタログ情報 / 候補遺伝子 / 臨床情報 / 網羅的 / 予後不良 |
研究概要 |
1)小細胞肺がん発生メカニズムに関わる遺伝子群の同定 小細胞肺がん切除例の網羅的遺伝子解析にて、変異、増幅、欠失が見られた遺伝子を統合的に収集し、細胞内シグナル経路へのマッピングと遺伝子産物が持つ機能ドメインによる分類を行った。この結果、がん関連経路の1つ(=PI3K/AKT/mTOR経路)に高頻度で変異を認めた。この経路の遺伝子変異は、経路を構成する遺伝子群(PIK3CA、PTEN、AKT2、AKT3、RICTOR、mTOR)の中で相互排他性を認め、また小細胞肺癌の発生に関わるとされる他の既知の遺伝子群(=MYC等)の変異とも相互排他性を認めたため、小細胞肺がんの発生に関与していると考えられた。 2)培養細胞実験系の構築、遺伝子産物の細胞生物学的機能確認 上述の切除検体の解析結果から、PI3K/AKT/mTOR経路の小細胞肺がん発生への関与が示唆されたため、培養細胞実験系を構築し、細胞生物学的機能の確認を行った。具体的には、PI3K/AKT/mTOR経路に変異を有する細胞株 H1694(AKT3増幅)においてAKTの強発現を確認した。更に細胞株H446(PTEN欠失)と細胞株H1048(PIK3CA変異)でリン酸化AKTの発現を確認し、これらがPI3K阻害剤により抑制されることを確認した。加えてH1048において、siRNAを用いてPIK3CAをノックダウンしたところ、細胞の増殖が抑制されることを確認した。以上の結果から、PI3K/AKT/mTOR経路に変異を有する細胞株では、この経路が腫瘍の発生に関与していることを、細胞生物学的にも確認した。 3) 国立がん研究センター東病院にて進行小細胞肺癌と診断が得られた約100例に関して、年齢,性別,喫煙,病理病期等の臨床因子を抽出した。進行例での候補遺伝子異常に関しては、小細胞肺がんの治療法開発を目的とした次世代がん研究戦略プロジェクトで収集される解析データと統合して、発生に関する遺伝子異常の疫学情報を収集する体制を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小細胞肺癌切除例の網羅的解析の結果から、小細胞肺癌の発生に関与すると予想される候補遺伝子群(PI3K/AKT/mTOR経路)が同定されたが、培養細胞実験系を構築し、この経路が腫瘍の発生に関与していることを細胞生物学的にも確認できたため、平成25年度の研究目的はおおむね達成された。
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今後の研究の推進方策 |
1. 培養細胞実験系や動物モデルを用いた遺伝子産物の細胞生物学的機能確認 1) ひきつづき遺伝子変異の生物学的特性を明らかにする実験を継続する。さらに初代培養細胞や3T3 細胞等を用いたex vivo での形質転換能の評価を行い、in vivo での造腫瘍能をマウスゼノグラフト実験系で確認する。 2) 上記の形質変化のメカニズムをさらに解明するために、変異体導入により誘導される遺伝子、タンパク質発現、修飾の変化についてトランスクリプトーム、プロテオーム解析を行う。 2. 別コホート(進行小細胞肺がん)における候補遺伝子異常の疫学情報の収集
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次年度の研究費の使用計画 |
候補遺伝子産物が複数にわたりバイオインフォマティクスによる絞り込みに時間を要し、生物学的特性の検証実験の開始が遅延し当該助成金が発生した。 研究全体の進捗には大きな遅れはなく、26年度初めに行う解析に必要な試薬等の購入に用いる。
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