研究課題/領域番号 |
24310002
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
山田 正俊 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 教授 (10240037)
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研究分担者 |
田副 博文 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 助教 (60447381)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 環境計測 / 環境放射線(能) / 福島第一原発事故 / プルトニウム / 防護 / 放射性セシウム |
研究概要 |
1. 福島第一原子力発電所からの放射性物質の飛散状況の概要を把握するために、福島第一原子力発電所事故初期の平成23年3月に福島県内各地および宮城県南部において採取した表層土壌、植物、水(水道水・地下水・河川水・雨水)試料中のCs-134, Cs-136, Cs-137, I-131, I-132, Te-129m, Te-232, La-140の濃度分布をガンマ線スペクトロメトリにより分析した。この研究成果は、Hosoda et al., Scientific Reports, 3:2283, doi:10.1038/srep02283 (2013)に発表した。 2. 前年度に検討し、確立した分析法である硝酸―フッ化水素酸混合溶液を用いた試料分解、硝酸系陰イオン交換法と塩酸系陰イオン交換法の2段階でプルトニウムを分離・精製する手法を用いて、アルファ線スペクトロメトリにより、表層土壌試料中の238Pu/239+240Pu放射能比の分析を行った。その結果、いくつかの地点において、大気圏核実験によるグローバルフォールアウト比の0.032±0.017に比べて有意に高い238Pu/239+240Pu放射能比が観測された。これは、 福島第一原子力発電所事故由来のプルトニウムが飛散・沈着したことを示唆している。238Pu/239+240Pu放射能比が0.5を超える高い地点は、 Cs-137の沈着密度が最も大きい(3000kBq/m2以上)原発から北西方向のエリアと重なった。 238Pu/239+240Pu放射能比が0.2-0.5の地点は、主に原発から45km以遠の北西方向の地点であった。 3. 福島第一原子力発電所事故由来のプルトニウムの飛散・沈着との関連を調べるために、分析法の複雑さなどのためにデータが極めて限られているSr-90について、低バックグラウンドベータ線計測法を用いた分析法開発の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
福島第一原子力発電所事故初期に福島県内各地および宮城県南部において採取した表層土壌、植物、水試料中のCs-134, Cs-136, Cs-137, I-131, I-132, Te-129m, Te-232, La-140の濃度分布から放射性物質の飛散状況の概要を把握できた。また、大気圏核実験によるグローバルフォールアウト比の0.032±0.017に比べて有意に高い238Pu/239+240Pu放射能比が観測され、 福島第一原子力発電所事故由来のプルトニウムが飛散・沈着したことを確認できた。さらに、238Pu/239+240Pu放射能比が0.5を超える高い地点は、 Cs-137の沈着密度が最も大きい(3000kBq/m2以上)原発から北西方向のエリアと同じであることを特定できた。
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今後の研究の推進方策 |
238Pu/239+240Pu放射能比マップの精度をさらに高めるために、福島市、会津若松市、郡山市、いわき市などの周辺地域に広げて分析を行う。 238Pu/239+240Pu放射能比とCs-137や I-131などの放射性核種濃度との関係について比較検討する。 大気圏核実験によるグローバルフォールアウト起源プルトニウムと福島第一原子力発電所事故起源のプルトニウムの比率を推定し、プルトニウムがどの範囲まで飛散したのかについて成果をとりまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費において、国際会議での発表を次年度に持ち越した。また、物品費において、試薬や理化学機器などの消耗品の一部を次年度に持ち越した。 福島第一原子力発電所事故由来プルトニウムの飛散状況の成果を取りまとめて、国際会議および国内で学会発表するために使用する。また、試薬や理化学機器などの消耗品の購入に使用する。
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