研究実績の概要 |
1. 福島第一原子力発電所からの放射性物質の飛散状況の概要を把握するために、土壌試料中の238Pu/239+240Pu放射能比の分析を行ってきた。238Pu/239+240Pu放射能比マップの精度をさらに高めるために、福島市、会津若松市、郡山市、いわき市などの周辺地域に広げて分析を行った。その結果、少量ではあるが福島第一原子力発電所由来プルトニウムが福島市付近, 郡山市でも観測された。福島第一原子力発電所から南方向にあるいわき市の土壌試料は0.1以下となり, 有意の原発由来プルトニウムは確認できなかった。 2. 238Pu/239+240Pu放射能比を測定した内の一部の試料について、235U/238U同位体比の分析をアルファ線スペクトロメトリーにより行った。今回測定した土壌試料中の235U/238U同位体比の平均値は0.00548±0.00049であり、天然存在比の0.00728と同程度であった。アルファ線スペクトロメトリーなので精度はよくないが有意の飛散はないと評価した。 3. 235Uの核分裂によって生じる放射性核種のうち、90Srは放射性Csとともに高い生成率(核分裂収率)を持つ。プルトニウムとともにストロンチウムの環境動態を把握するため、土壌および水中生物であるサクラマスの分析を実施した。土壌試料においては福島第一原子力発電所より北西方向に飛散した高濃度プルームにより汚染された浪江町赤宇木で最も高い90Sr (166 ± 24 Bq/kg)および137Cs (72,227 ± 206 Bq/kg)濃度が観察された。一方で福島市や郡山市では90Sr濃度については事故以前のバックグランド値と区別できない10 Bq/kg以下の値であった。土壌試料の90Sr/137Cs放射能比は0.0002~0.0023であり、平均値は0.0013であり、文部科学省によって実査されたモニタリング結果と整合的であった。
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