研究課題/領域番号 |
24310003
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
太田 寛行 茨城大学, 農学部, 教授 (80168947)
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研究分担者 |
成澤 才彦 茨城大学, 農学部, 教授 (90431650)
上條 隆志 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (10301079)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 新生火山灰 / 三宅島2000年噴火 / エンドファイト / 根圏微生物 / 土壌微生物遷移 / 荒廃地再生 |
研究概要 |
本研究は、三宅島2000年噴火後の土壌生態系を調査対象として、火山ガスの噴出量減少にともない火山ガスで抑えられていた植生回復が一気に進むと考えられるこの数年間に起こる土壌微生物生態系変化の様態を解析し、新生火山灰から始まる土壌形成の初期過程における微生物の役割と植物-微生物間の相互作用を明らかにすることを目的とするものである.平成25年度は,標高傾度に沿ってパッチ状の草本から低木林の段階に達する3地点(IG7,IG8,IG9地点)での植生と土壌微生物群集との関係を解析した.その多変量解析の結果,パイオニア植物のオオシマカンスゲ(Carex oshimensis)の出現と正の相関を示す細菌グループ(Oxalobacteraceae, Gallionellaceae, Micrococcaceae)と負の相関を示すグループ(Xanthobacteraceae, Gemmatimonadaceae)の存在を明らかにした.一方,主要なパイオニア植物であるハチジョウススキ(Miscanthus condensatus)の出現と相関する細菌グループは検出されなかった.しかし,負の相関を示す糸状菌グループ(Sordariomycetes, Saccharomycetes, Pezizomycetes, Dacrymycetes)の存在は推察された.ハチジョウススキについては,植物根エンドファイト画分と根圏の微生物多様性について解析を進めた.その結果,地点間での根圏細菌の多様性は安定しているが,植物根エンドファイト画分の細菌多様性が植物群落の成長にともなって低下することが推察された.一方,糸状菌の多様性は,植物根エンドファイト画分と根圏の両方で,植物群落の成長にともなって増大することが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新生火山灰から始まる土壌形成の初期過程における微生物の役割と植物-微生物間の相互作用の解明という目的に対して,パイオニア植物の出現と正および負の相関を示す微生物種の特定に至った点で順調に進んでいると言える.今後は,その菌種の分離と性状解析を進める方向性が確定した.なお,この微生物種の特定に関する研究成果をThe 6th International Congress of East Asian Federation of Ecological Societies (EAFES)で発表した結果、優秀ポスター賞を受賞した。
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今後の研究の推進方策 |
パイオニア植物と正の相関があると特定された微生物種を,植物根エンドファイト画分と根圏画分から分離することをめざす.特に,微生物の窒素固定活性に焦点をあてて,パイオニア植物と微生物の関係をさらに解明する.
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの研究結果から,次年度は,現地での植物生態調査と土壌調査の回数を増やすことを計画した.その追加調査分に関わる旅費と消耗品費を捻出するために,平成25年度の消耗品と旅費の使用を抑えた. 追加調査分に関わる旅費と消耗品費に使用する計画である.
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