研究実績の概要 |
平成26年度に計画した研究項目は,パイオニア植物(ハチジョウススキ,Miscanthas condensatus)の根に内生する微生物群と根圏の微生物群集の解析であり,生態系回復における植物と微生物の相互作用の解明であった。調査地点は,噴火口のある雄山山頂付近から下ってトランスセクトを設定し(4地点:OY, IG7, IG8, IG9),ハチジョウススキの生育密度レベルが異なる地点の土壌を採取して分析した。細菌を対象とした16S rRNA遺伝子のPCR-T-RFLP(制限断片長多型)のプロファイル解析では,植物根の内生細菌群集と根圏の細菌群集は異なることが示唆された。さらに,細菌群集構造を見るために16S rRNA遺伝子のタグパイロシークエンス解析を行った。その結果,ハチジョウススキの生育密度の上昇にともない,根圏の細菌群集構造が変化することが判明した。すなわち,ハチジョウススキの初期群落の根圏の細菌群集では,Betaproteobacteria綱とGammaproteobacteria綱の細菌が多くを占めたが,これらの細菌グループはハチジョウススキの群落成長にともなって減少し,代わりに,Alphaproteobacteria綱とActinobacteria門のグループが増加した。Alphaproteobacteria のなかでは,特にBradyrhizobium属 Rhizobium属が正の相関を示し,Actinobacteria門ではArthrobacter属が特徴的であった。また,Acidobacteria門のGranulicella 属も増加する傾向にあった。これらの結果より,初成土壌形成におけるパイオニア植物の出現に係わる微生物がほぼ特定できたと言える。
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