研究課題/領域番号 |
24310004
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
廣田 充 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (90391151)
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研究分担者 |
井田 秀行 信州大学, 教育学部, 准教授 (70324217)
飯村 康夫 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教 (80599093)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 炭素循環 / 土壌呼吸 / 森林生態系 / 成熟林 / 土壌有機物 |
研究概要 |
成熟林の炭素吸収能力を精度良く推定するために、成熟林に特有なギャップ・モザイク植生構造に着目した調査を行った。前年度までの調査結果から、成熟林における土壌呼吸速度はギャップ区で小さい一方、成熟区で大きいことを明らかにしてきたが、その要因を解明するために、新たに全天写真による開空度、土壌有機物量、および土壌水分量などの環境要因を測定して土壌呼吸速度との関係を検証した。その結果、成熟林では、ギャップ区ほど土壌水分が高く、その結果として土壌呼吸速度が小さくなる可能性を明らかにした。 さらに、ギャップ区と成熟林区の土壌呼吸速度の日変化を本研究費で購入した自動開閉式測定システムで測定したところ、ギャップ区と成熟林区では土壌呼吸速度の日変化パターンが大きく異なることも明らかになった。それぞれ土壌温度の日変化パターンと同様のパターンは見せるものの、ギャップ区では土壌温度が高くなるよりも数時間前にピークに達することを明らかにした。他の環境要因との関係を検証した結果、ギャップ区でのこのような日変化パターンは、日射量の影響を受ける可能性が高いことが示唆された。また、共同研究者によって蓄積している土壌有機物の質も,ギャップ区と成熟林区で大きく異なることも明らかにしてきた。 これまでの研究結果から、森林の炭素吸収能力を左右する土壌呼吸速度は、その量のみならず環境要因との関係もギャップ区と成熟林区で大きく異なることを明らかにしてきており、成熟林に特有のギャップ・モザイク植生構造が土壌呼吸の空間不均一性にとって重要な要因であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成熟林の炭素吸収機能を決定する主要なCO2フラックスのうち、土壌呼吸の空間変動パターンとその要因を明らかにしつつある。さらに、蓄積している土壌有機物の質的な評価も同時に進めており、成熟林の炭素吸収機能を把握する上で不可欠な空間不均一性とその要因の解明に一歩近づけたと言える。一方で、炭素吸収に関わるCO2フラックスについては、今後の調査で明らかにする予定であり、研究達成度としては、おおむね順調に進展している、と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまで明らかにしてきた土壌呼吸速度の空間不均一性のメカニズム解明を進めるとともに、成熟林内のCO2吸収量に関わる項目(特に林冠木の成長量と下層植生の成長量)と土壌有機物の分解活性の空間変動パターンについて明らかにしていき、成熟林における炭素吸収機能を推定する予定である。
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