研究課題
本研究は、動物プランクトンの自然死亡過程が生態系に与える影響について、非捕食死・部分被食死という新たな視点から吟味し、再評価することを目的とする。そのために、1)現場における自然死亡過程把握、2)非捕食死を引き起こす要因の特定、3)部分被食死の定量化を行い、これらの結果から、動物プランクトンの死亡過程が、海洋生態系を構成する二つの物質循環系、すなわち生食食物連鎖・微生物食物連鎖それぞれに与える影響を明らかにし、新たな海洋低次生態系構造を提示する。研究は沿岸域、外洋域の異なるフィールドを対象に実施した。沿岸域では岩手県大槌湾において春季から夏季にかけての非捕食死亡個体の出現状況と環境要因について調査した。観測の結果セジメントトラップに捕集される非捕食死亡個体の割合は、生きたままスイマーとして捕集されるものの1/10~1/100程度と少なく、この時期の大槌湾では非捕食死による死亡率並びに沈降粒子への寄与は低いことが明らかとなった。外洋域では、混合域に突発的に発生する浮遊性被嚢類の一種であるウミタル類を対象としてヴィデオプランクトンレコーダーによる観測から、非捕食死亡個体の出現割合とその要因、さらに死亡個体沈降による深層への物質輸送について見積もった。調査海域である親潮黒潮混合域ではサブメソスケールの湧昇現象に伴う基礎生産速度の上昇がウミタルブルーム形成に寄与している可能性が高く、ウミタル個体群形成は無性生殖個体の比率やサイズに対応して密度が変化することが明らかとなった。また高密度群では自らの高い摂食圧のため餌不足となり、飢餓のため死亡する個体が増えると考えられる。これらの個体の多くは沈降により下層へ輸送され水深150mにおける粒子状沈降フラックス炭素量の8-17%に相当することが明らかとなった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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