研究実績の概要 |
学術研究船白鳳丸のKH-14-3次航海(2014年6月~8月、主席:小川浩史)において、中部北太平洋における難分解性溶存有機物と微生物群集構造の鉛直分布パターンの南北比較の調査を取組んだ。難分解性溶存有機物に関する試料は、15観測点の全層(10~25層)から採取し、ガラス繊維ろ紙(Whatman GF/F)による濾過海水をガラスアンプルに封入し、陸上での分析のために持ち帰った。難分解性との比較として測定した、全遊離態アミノ酸は、数nM程度と極めて低濃度で存在することがわかったが、中でも、グリシンの占める相対的な割合が高い事がわかった。同時に放射性同位元素でラベルしたグリンシンに対する従属栄養細菌群集の取り込み活性を測定した結果、他のアミノ酸(ロイシン)に比べ著しく活性が低いことが判明し、従来、易分解性として知られてきた遊離態アミノ酸の中に、分解性の極めて低いグリシンが含まれていることが明らかとなった。 微生物試料に関しては、白鳳丸KH-13-7次航海及びKH-14-3次航海によって、西経170度ラインに沿って北緯68度から南緯50度までの連続的なトランセクトサンプルを得ることができた。これらのサンプルのうち、25観測点(Stn.0-13)の表層海水と9観測点の深度別海水(0, 10, 100, SCM, 200, 400, 1000, 2000 and Bottom-50)5Lまたは10Lを採取し、船上で孔径3.0μmと 0.2μm のフィルターに連続的に濾過した。研究室に持ち帰った後、約200サンプルのフィルターからDNAを抽出し、細菌種分類の指標となる16SrRNA遺伝子を増幅、454シーケンサーによる塩基配列の決定を行った。これらの配列データをもとに微生物群集構造の解析、環境要因と合わせて統計学的な解析を進めている。
|