海洋環境中における難分解性の溶存有機物(Dissolved Organic Matter: DOM)の生成過程を明らかにする実験として、海草・海藻類を材料に用いて溶出・分解実験を行い、 海草・海藻類由来のDOMの分解特性を調べた。試料として、海草(アマモ:Zostera marina)の葉部と根茎部、大型藻類(コンブ:Laminaria sp.)の3種類を用いた。これらの試料を人工海水中に浸し細菌群集とともに好気的条件下にて10日間培養し、DOMを溶出させた。その後植物試料を取り除き、DOMの分解過程を120日間調べた。DOMの量として、溶存有機炭素(DOC)、溶存有機窒素(DON)濃度を測定した。120日目におけるDOMの残存率は、海草葉部で66±9%、海草根茎部で12±3%、大型藻類で48±3%であった。このことから、大型藻類と海草葉部からは難分解なDOMが多く生成し、海草根茎部では比較的分解性が高いDOM が生成することが示唆された。また、残存したDOMのC:N比は、海草葉部で14±5、海草根茎部で20±9、大型藻類で252±28であり、特に大型藻類からは炭素リッチな難分解性のDOMが生成することが示唆された。大型藻類由来のDOMは、溶出前に実験に供した材料中の有機炭素量に対する残存率も10±4%で最も高く、難分解性DOMへの移行により潜在的に高い炭素隔離能をもつことが示唆された。
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