研究課題/領域番号 |
24310011
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
阿部 理 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 助教 (00293720)
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研究分担者 |
井龍 康文 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00250671)
浅海 竜司 琉球大学, 亜熱帯島嶼科学超域研究推進機構, 特命助教 (00400242)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 古環境復元 / サンゴ年輪 / 安定同位体 |
研究概要 |
本研究は、過去1300年間の気候復元を、とりわけ情報量の少ない低緯度海洋域を対象として実施することを目的とする。そのため、琉球列島石垣島海域において試料を採取し、骨格炭酸塩の放射性炭素による年代決定、酸素同位体比および金属濃度比、炭素・酸素二重置換同位体比による水温変動の復元を行う。 本年度は以下の項目を実施した。 1)石垣島米原沖で採取した現生サンゴ年輪試料の酸素同位体比分析 2003年に採取した、514本の年輪を有す試料について、現在(2003年)から270年前までの酸素同位体比を分析した。酸素同位体比からは、地球温暖化に伴う水温上昇が認められ、特に冬季の上昇量が大きいことが明らかとなった。周期解析からは、18世紀から現在にかけて徐々にモンスーン変動の影響が小さくなり、変わってENSOと思われる数年規模の変動が卓越している様子が明らかとなった。 2)石垣島登野城礁で採取した埋没化石サンゴ年輪試料の酸素同位体比分析 2000年に採取した、300年の年輪を有す試料について280年間の酸素同位体比を分析した。放射性炭素年代測定によれば、最古部の年代が西暦860年であったため、9世紀から12世紀にかけての水温変動を明らかにした。1026~1036年にかけて急激な水温の低下が認められ、樹木年輪を用いた東アジアの気温を復元した先行研究と時期・傾向とも同様であった。周期解析から、この水温低下期後の数十年間についてはENSOと思われる数年規模変動が卓越し、その他の時期は40~50年周期が卓越していることが明らかとなった。 以上の結果は、2013年3月の日本海洋学会春季大会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸素同位体分析は当初の計画以上に進展している。また、3月に化石試料を採取し、現在年代測定を行っている。一方、その他の分析項目については未達成である。そのうち金属濃度比についてはH25年5月に分析を行う予定であり、その他項目についても順次進めていく。 以上から総合的に(2)おおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に進展しているため、計画調書に従って順次進めていく予定である。具体的には、今年度に採取した試料の年代が想定内であれば、同試料の分析を進め、予想を大きく外れた場合は、今年度改めて採取を行う。すでに所有する試料については、酸素同位体比分析を進めるとともに他の化学成分についても順次進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
残金は主として琉球大学の浅海の分担金であり、今年度予定していた金属濃度比の分析を次年度に延期したためである。H25年5月に分析予定であり、その際に使用する。
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