研究実績の概要 |
二酸化炭素のレーザー同位体分光計の精度の向上のための装置の改良を行った。二酸化炭素のレーザー同位体分光計の精度が、試料大気中の二酸化炭素の濃度に依存してしまう現象がある。同位体比が分かっている種々の濃度の標準ガスでレーザー同位体分光計を校正することにより、ある程度は補正が可能である。しかし、より精度を上げるためにはレーザー同位体分光計に導入する大気試料を二酸化炭素を含まない純空気で希釈して、試料大気中の二酸化炭素の濃度を高い精度で一定にする装置を作成した。これにより、レーザー分光同位体計測装置による大気二酸化炭素の濃度・同位体比計測結果から二酸化炭素の排出源の特定を高い精度で行うことができるようになった。 レーザー分光法を用いた同位体計測装置を用いて、大気中の二酸化炭素CO2(δ13C,δ18O,)および水蒸気(δ18O, δD)の安定同位体比を、名古屋大学構内において連続的にリアルタイム計測したので、そのデータを解析した。観測期間中に、CO2と水蒸気の同位体が急激に大きく変動したイベントが2度観測された。9月8日は台風が、9月23日は停滞前線が観測所を通過した。台風が通過した日および停滞前線の通過した日のCO2同位体およびH2O同位体の変化に注目し、気象データと照らし合わせて考察を行った。 台風の通過時のキーリングプロットにより、異なるCO2の濃度と同位体比を持った気団が観測所付近の大気に急激に流入したことが推察された。観測所の南側には火力発電所が多く存在することから、台風により火力発電所付近の大気が観測所にまで運ばれた可能性が考えられた。前線通過時のキーリングプロットにより、異なるCO2の濃度と同位体比を持った気団が観測所付近の大気に移流したことが推察できた。観測所の北側には山岳地帯が広がっており、観測所北側の大気が観測所にまで運ばれた可能性が考えられた。
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