研究分担者 |
井上 淳 大阪市立大学, 理学研究科, 講師 (90514456)
廣瀬 孝太郎 福島大学, 共生システム理工学部, 特任助教 (60596427)
森脇 洋 信州大学, 繊維学部, 准教授 (30321938)
加田平 賢史 大阪市立環境科学研究所, 環境調査課, 研究員 (50342986)
香村 一夫 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10434383)
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研究概要 |
東日本大震災に伴って発生した福島第一原発事故による環境放射能汚染の動態とその放射性物質をトレーサーとして用いた環境中の物質循環と動態解析を行った。平成24年度は東京湾及び日本各地の環境試料の採取と放射能濃度及び各種の環境汚染物質濃度の測定を開始した。そのために,本研究の主要な研究フィールドである東日本一帯の土壌や東京湾,新潟県,福島県などで底質試料の採取を行った。東京湾では福島第一原発事故発生以降,平成22年4月から首都圏及び東京湾で予備調査を開始しているが,本科研費によって,さらに緻密な調査研究を行うことが可能になり,福島第一原発事故に伴う環境放射能汚染の基礎的情報を得ることができた。 東京湾では,延べ90地点からエクマン・バージ採泥器による表層底質と潜水ダイバーによるコア試料を採取した。本研究で対象としている放射性セシウム(^<134>Cs,^<137>Cs)は東京湾の荒川・旧江戸川河口域で高濃度を示し,乾燥底質に対して2200Bq/kgに達する試料も存在した。時間の経過と共に,表層底質の放射性セシウム濃度はゆっくりと上昇する傾向にあり,また汚染海域も少しずつ拡大しているが,現状では羽田空港と浦安市を結ぶラインの内側に放射性セシウムの大部分が沈積していると考えてよい。底質中の放射性セシウムの鉛直分布は,底質の堆積速度から予想されるより深い深度にまで分布しており,潮流や生物橿乱などによる物理的混合では説明できない現象も見出された。これは,放射性セシウムの環境中での動態を議論する上で重要な課題である。生物試料の分析も行ったが,現在のところ東京湾の魚介類の放射性セシウム濃度は30Bq/kg以下である。しかし,江戸川中流域では一般の食品規制値100Bq/kgを超えるウナギも見つかり,引き続きモニタリング調査を行い,放射能汚染の推移を検証していく予定である。 各研究分担者も,それぞれの研究計画に従って研究を開始している。なお,本申請の研究を開始するに当たり,平成24年9月3日に研究代表者と研究分担者の全員が近畿大学に参集して,本研究計画に関する第1回目のシンポジウムを開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
事故直後から予備調査を行っていたために,現場の状況と整合した研究計画を立案することができた。さらに,予定していた試料採取も順調に実施することができ,分担研究者もそれぞれの分野で積極的に研究計画を進めることができた。積極的に試料採取を行ったので,そのために経費(旅費・人件費・サンプリング委託費等)を当初の予定以上に使用した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究開始の初年度である平成24年度は,試料採取が最も大きな課題であったが,研究目的に沿った試料を順調に採取することができた。当初の予定通り,平成25年度は得られた試料の分析を行うことになる。なお,既に一部の試料については分析を始めている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の試料採取は順調に実施した。当初の予定より多くの試料採取を行うことになり,試料採取委託費や旅費などの決済に遅延が生じたために,結果的に2,675円の余剰が生じた。平成25年度の研究経費として,消耗品費に充当する予定である。
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