研究課題/領域番号 |
24310019
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岡崎 裕典 九州大学, 高等研究院, 准教授 (80426288)
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研究分担者 |
高橋 孝三 北星学園大学, 社会福祉学部, 教授 (30244875)
坂本 竜彦 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (90271709)
池原 実 高知大学, 自然科学系, 准教授 (90335919)
関 宰 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (30374648)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 鮮新世温暖期 / データ・モデル統合 / 太平洋 / 海洋ゲートウェイ |
研究概要 |
本研究は、数値モデルによって予測された21世紀後半の温暖化地球のアナロジーとして注目されている鮮新世温暖期を対象に、ベーリング海をはじめとする海底堆積物試料から、北太平洋における海洋循環、水塊構造、生物生産を復元する。特に境界条件として重要な2つの海洋ゲートウェイであるパナマ海峡とベーリング海峡の役割を、堆積物記録と古気候モデル実験の双方から検証することを目的としている。 本年度は、前年度に立てた2つの作業仮説を検証した。(1)パナマ海峡浅化以前は、北太平洋が熱塩循環の起点であり、西岸境界流である古黒潮が現在よりも強く北太平洋高緯度域は高塩分であった、(2)約200万年前にベーリング海峡は閉鎖し北太平洋高緯度域の寒冷化をもたらした。具体的には(1)強い古黒潮の検証のため深海掘削計画31次航海において九州‐パラオ海嶺北端から採取されたDSDP Site 296試料をリクエストし中新世以降の底生有孔虫の炭素および酸素安定同位体比を測定した。その結果、後期中新世に栄養塩に乏しい水塊の存在が示唆された。(2)ベーリング海峡閉鎖の検証のためU1341試料の150万年前から250万年前の層準について、バイオマーカー(アルカン)抽出とその水素同位体比測定、および珪藻群集の高解像度分析を行った。その結果、約200万年前に顕著な寒冷化イベントが発生していたことが明らかになった。 2013年9月に英国ブリストル大学で開催された第2回鮮新世気候ワークショップに参加し参加者と議論、情報収集を行うとともに、海外の研究協力者と情報交換を行った。 統合国際深海掘削計画323次ベーリング海航海で得られた堆積物試料の成果公表を進め、Deep-Sea Research II誌特集号をはじめとして7本の論文が公表された。2014年3月にワークショップを開催し、200万年前の寒冷化イベントをはじめとした今後の成果まとめについて議論し、論文執筆の準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の進捗は順調である。ベーリング海掘削試料の分析はほぼ完了し、新たにリクエストした北西太平洋試料の分析も順調に進んだ。国際ワークショップに参加し最新の研究動向を把握できた。複数の論文を国際誌に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
ベーリング海峡ゲートウェイについては、データはほぼ出そろったので論文執筆に集中する。必要に応じて追加分析を実施する。北西太平洋堆積物試料については、生層序とストロンチウム同位体層序の構築を進め、年代軸を確立するとともに新たな海洋循環試料として魚の歯のネオジム同位体比測定を実施する。最終年度となる平成26年度は、成果公表に力を注ぐ。
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次年度の研究費の使用計画 |
堆積物試料処理の研究補助者の雇用開始が9月にずれこんだため。 堆積物試料処理の研究補助者雇用に充てる。
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