研究概要 |
東アジア地域における越境汚染を定量的に検討するため,これまで試料の得られていなかった大韓民国において,南北に縦断するように7地域(ソウル,ポリョン,スンチョン,スンチョン,ウルサン,ボハン,プサン)のため池から計27個の泥質試料を採集した.本試料から抽出された球状炭化粒子(SCP)は,本年度機器更新を行ったSEM-EDSによって化学分析が行われた.その分析結果をこれまで得られている日本,中華人民共和国,中華民国の分析結果と比較した結果,大韓民国のSCPの化学的特徴は日本のものに類似しているが,中華人民共和国,中華民国のものとは大きく異なることが明らかとなった. また,SCPの大きさによる飛散距離の効果を明らかにするため大阪平野における公立小中学校のプールに堆積しているSCPを用いて,湾岸工業地帯からの距離とSCPの平均粒径の関係を解析した.その結果,粗粒(>>10μm)なSCPは湾岸工業地体周辺に限って堆積するのに対して,細粒(<10μm)なSCPは少なくとも大阪平野内では普遍的に認められることが明らかとなった.このことは,粒径10μmがSCPの飛散を考える場合の閾値となることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は研究実施計画通りに,韓国において堆積物試料の採取を行い,これまで採取してきた試料と併せて本年度新規購入したEDSによる元素組成分析を行った.また,当初の計画ではこれらの結果に基づき論文を1本作成する予定であったが,実際は3本作成し,そのうち1本はすでに出版され,1本は印刷中であり,またもう一本は国際総合誌(Nature Geoscience)において現在査読中である.よって,当初の計画以上に研究は進展している.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,SEMのメンテナンスおよび操作アプリケーションの更新を行う.また,本年度は中国(香港)のため池において試料採取を行う.この香港での試料採取は,香港大学の安原盛明准教授と協力して行う.これまで採取してきた試料と併せて元素組成分析を行い,現在の離島・地方と東アジア各工業都市の球状炭化粒子の元素組成・表面形態を比較し現在の西日本各地への球状炭化粒子の供給源(供給地域)を明らかにする.この成果を基に学術論文を作成・投稿する
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