研究課題
本年度は,8月24日から29日までの6日間,香港の貯水池・内湾において柱状堆積物試料の採取を行った.現地での試料採取は香港大学の安原盛明准教授,島根大学の瀬戸浩二准教授の協力を得て行われた.採取した試料は,香港大学,島根大学,大阪市立大学でそれぞれ分析・解析を行っており,香港での化石燃料燃焼に伴う粒子状汚染物質の沈着量の変遷,また汚染物質の燃料種の時系列変化を明らかにする予定であり,その成果は今後随時公表される.本科研費期間中の成果として,日本,中国,韓国,台湾を含む東アジア地域から採集された,堆積物試料中の球状炭化粒子(SCPs)の分析・解析結果から,以下の結論を得た.(1)日本のSCPsと韓国のSCPsには系統的な化学組成の相違はないが,中国,台湾とは明瞭な相違がある.(2)東アジア地域においては,SCPsの表面化学組成を用いてその排出国を推定することができる.(3)SCPsの輸送距離は,その粒径によって大きく異なり,10 µmより粗粒なものの多くは排出源の近傍10km程度に限られるのに対して,それ以下のものは数百km以上にもおよぶことがある.(4)日本海の離島(隠岐,壱岐,五島列島)は日本や韓国に比較的近いにもかかわらず,中国由来のSCPsの表面化学組成を持つ粒子が全体の40%程度を占め,離島などに飛来する粒子状汚染物質のうち,中国由来のもの一定の割合を占めることが示唆された.(5)SCPsは汚染物質の発生源を特定する上で有用であり,越境汚染の指標となりうる.また,本科研費期間中の成果の集大成となる論文(Inoue et al.)と総括論文(井上ほか)を公表した.
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 備考 (1件)
Atmospheric Environment
巻: 95 ページ: 375-382
10.1016/j.atmosenv.2014.06.048
地質学雑誌
巻: 120 ページ: 287-298
10.5575/geosoc.2014.0035
http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/geos/geo2/okudaira.html