研究課題/領域番号 |
24310024
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
新田 裕史 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究センター, 研究センター長 (40156138)
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研究分担者 |
高見 昭憲 独立行政法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 室長 (00262030)
森野 悠 独立行政法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 研究員 (50462495)
北園 孝成 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (70284487)
鴨打 正浩 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (80346783)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 大気汚染 / 健康影響 / 粒子状物質 / 循環器疾患 / 越境汚染 / 東アジア |
研究概要 |
福岡市内において、粒子状物質の連続観測を行い、微小粒子の重量濃度およびその成分分析 (SO4,NO3,Cl,有機物など)を実施した。平成24年7月下旬において福岡市内でPM2.5の高濃度事例が観測され、この時にはSO4濃度の上昇が認められた。また、その数日後に大阪においてPM2-5濃度およびSO4濃度の上昇が観測された。大気モデルからの検討より、この高濃度事象は、東アジアからの移流によるものと考えられた。 また、大気モデルによるシミュレーションより、国内での微小粒子状物質のうち、東アジアからの移流による粒子の寄与を推定し、寄与推定データを疫学研究に用いるための課題について検討した。 過去の疾患登録データと大気環境因子データを結合し、循環器疾患(脳卒中、心筋梗塞)による入院と黄砂粒子曝露との関連についての予備的解析を行った。1999~2010年3月の問に脳卒中を発症し24時間以内に福岡県内の医療機関(福岡脳卒中登録研究参加医療機関)に入院となった脳梗塞7429例について、黄砂の飛来との関連について統計手法を用いて解析した。脳梗塞全体においては明らかな関連は見られなかったが、病型別(ラクナ梗塞、アテローム性血栓性脳梗塞、心源性脳塞栓、その他)に分類した解析を実施したところ、黄砂飛来(ラグ0-1日)によるアテローム性血栓性脳梗塞のオッズ比は、1.40(95%信頼区間、1.06,1.85)であった。一方、急性心筋梗塞と黄砂飛来との関連についても有意な関連がみられ、黄砂飛来(ラグ0-4日)によるオッズ比は、1.20(95%信頼区間、1.02,1.40)であった。これらの結果は越境粒子が循環器疾患に影響を与えていることを示す重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
疾患登録データおよび福岡における大気汚染物質の観測は順調に進んでいる。既存データを用いた予備的解析も実施し、それらの結果について学術集会や学術雑誌で公開した。
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今後の研究の推進方策 |
福岡での観測、疾患登録の継続とともに、越境大気汚染の寄与について、多角的に評価する。また、疫学研究に必要なデータセットを作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度末の研究グループ会合を25年度4月に実施することにしたため、そのための旅費を25年度に使用することになった。平成25年度は、福岡での観測に必要な経費および、疾患登録を担当している医療機関、研究機関との打ち合わせの旅費、データセット整備の経費、および賃金として使用する。
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