研究課題/領域番号 |
24310025
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
野原 精一 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 室長 (60180767)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 湿地生態系 / 放射性物質 / 生態系機能 / 物質循環 / 環境影響評価 |
研究概要 |
(目的)日本の代表的な湿地生態系(高汚染、低汚染、非汚染湿地)での放射性物質の汚染実態と環境動態を把握する。特に高汚染地である福島県北部太平洋地域の河川湿地における詳細な汚染地域マップの作成と被ばく量の定量化を行うとともに、湿地植物への移行率、自然による浄化機能、除染処理効果に関する生態系機能を定量把握し、被ばく量低減効果を提示する。 (成果) 【(1)湿地生態系での放射性物質等の実態把握】(1)物理化学的環境の把握・各地域の5地点に連続測定用の水位データロガーを周年設置した。・過去に収集された融雪、積雪、凍結深などの全ての気象データを収集解析して、冬期~春期のモデル化し環境変動を把握した。・池とう生態系における水温分布、地下水流入等の水収支解明、モデル化に必要なデータを収集した。(2)水循環・物質循環機能の把握1)水循環機能の把握・永久方形区に表層から塩ビパイプを埋設し、定期的に水位を測定し、表層地下水の流動性を場所・深度別に比較した。・電磁流速計を設置し、水の交換を測定した。・河川水、土壌間隙水、雨水等の採取を行い、水質測定を行った。2)土壌環境の変動性の把握・永久方形区において植物の植生調査・現存量・密度・群落高の測定を行った。採取した植物の窒素・炭素安定同位体比の分析サンプルを収集した。 3)放射性物質、物質循環機能の把握・表層コア約100mlを定量採取し、現地で環境放射性物質をSX-SPAにて簡易分析し、Ge検出器で詳細分析を実施した。有機物含有量測定を行った。・画像解析の教師として永久方形区の植生調査を実施する。・湖沼でADCPを装備した自動制御の環境観測プロファイラーをチャーターして、水深・流行流速分布・水温等の物理的なモニタリングを行った。赤城大沼での流速分布、湖盆図を作成した。航空写真の自動判読による植生分類、流路網解析を実施し、ホットスポットからの流入経路を推定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・計画通りハンノキ等の樹木の円盤、赤城大沼では湖沼堆積物を採取して、年輪解析、底質分析等より環境変動を検出する準備を行った。
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今後の研究の推進方策 |
【(1)湿地植物への移行係数の解明】高汚染地域の湿地、低汚染地域の湿地(霞ヶ浦、涸沼湿地)及び非汚染地域(尾瀬ヶ原、釧路湿原)から底質および湿地植物を採取して、環境放射性物質の分析を行う。 ・底質:表層コア約100mlを定量採取し、現地で環境放射性物質をSX-SPAにて分析する。一部粒度組成、有機物含有量測定のため持ち帰る。 ・湿地植物:バイオマス推定のための定量採取、草高、密度を測定。環境放射性物質のため5-10本を地上部のみ刈り取り、乾燥、灰化(450℃)、U-8容器に入れてγスペクトロメトリー法で環境(粒度、有機物含有量)との関連を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
【(2)湖沼堆積物による過去の履歴評価】高汚染地域の湿地(福島県北部太平洋側の河道内湿地)、底汚染地域の湿地(霞ヶ浦、涸沼湿地)及び非汚染地域(尾瀬ヶ原、釧路湿原)の代表的湖沼から湖低堆積物を簡易湖沼コアサンプラーで採取し、深さ1cm毎に切り分けて、乾燥、灰化(450℃)、U-8容器に入れてγスペクトロメトリーで環境放射性物質を定量する。 ・解析:過去の環境汚染(1960年代核実験、チェルノブイリ事故)による汚染履歴を解析して、その湖沼流域への環境放射性物質の負荷量と堆積量の関係を求め、福島第一原発事故の減少曲線を推定する。
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