研究課題/領域番号 |
24310026
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
栗原 健夫 独立行政法人水産総合研究センター, 西海区水産研究所, 主任研究員 (30360770)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 貝類相 / 東日本大震災 / 多様性 / 外来種 |
研究概要 |
【目的】 前年度に日本全国の太平洋岸潮間帯の磯浜における1978~2012年の貝類相調査のデータを解析した結果、2011年の東日本大震災の前後での貝類相の変動規模は、東北地方とそれ以外の地方との間で似通っていることが示唆された。そこで本年度は、こうした傾向の再確認と、震災以外の観点からのデータの解析とをおこなった。後者においては、近年さまざまな地域で危惧されている種多様性の減少と外来種の増加とについて、正否を検討した。 【方法】 北海道~九州の19定点(うち、東北地方に3定点)で1978~2006年に計7回、低潮線~高潮線に高度別に約9個の方形枠が設置され、内部の貝類が計数されてきた(1990年以前のデータは環境庁自然環境保全基礎調査に基づく)。これと同様の計数調査を、震災後の2012年春・夏と2013年春とに行った;ただし、東北地方の3定点においては、地盤沈下後に新たにできた低潮線~高潮線に方形枠を設置した。以上の計10調査のデータを用いて、東北地方と他地方との間で震災前後の貝類相変動の規模を比較し、さらに、各定点について種多様度指数と外来種ムラサキイガイの密度との時間的変動を解析した。 【結果と考察】 震災前後での貝類相変動の規模は東北地方とそれ以外の地方との間で似通っていることを、再確認した。種数や種多様度指数は2/3以上の数の定点において1978~2013年に上昇していた。外来種ムラサキイガイの定点間平均密度は1970年代→80年代→、、、→2010年代と時を追って、48.9→23.5→6.2→0.4→1.2 個体/m2とほぼ右肩下がりの傾向を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
連携研究員と連絡をとりながら、類例の無い大規模なデータを、狙い通り得られた。また、震災前後での貝類相変動の規模が東北地方内外で似通っているという傾向を再確認できた。くわえて、多くの定点における種多様性の上昇、ならびに外来種ムラサキイガイの減少という興味深い傾向を得られた。ただし、データの規模の大きさゆえに、解析と論文化が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2012・3年と同様の調査を2014年の春に実施し、これまでデータを蓄積してきた東北地方の「旧潮間帯」、すなわち震災時の地盤沈下により潮下帯へと近づいた古い潮間帯について、貝類相の変動速度を解析する。また、震災前後における貝類相変動の東北地方内外の比較、種多様性の変動パタン、外来種ムラサキイガイの密度低下について、詳細な解析と論文化を急ぐ。
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次年度の研究費の使用計画 |
好天にめぐまれたため、調査を順調に進められ、旅費を当初予定額よりも低く抑えられた。 天候不良による調査の延長・延期にそなえ、旅費を多い目に確保する。もし、余剰金が4~6月の調査シーズンの終わりごろに生じた場合には、本研究の成果発表の経費(学会参加、英文校閲など)にあてる。
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