前年度と同様に、2014年4~5月に北海道から九州にいたる19定点で、0.25m2方形枠をおおむね9個ずつ設置し、内部の貝類を種別に計数した。この調査も含めると、全国の岩礁潮間帯(磯)の貝類相について、1978~2014年に計13回の調査データが蓄積できたことになる。このデータを解析した結果、調査定点ごとの東日本大震災の物理的な規模と、そこでの貝類相変化との間に以下の相関を見出した。 津波最大波高や震度の大きかった定点では、単位面積あたりの種数が増加しやすく、これに呼応して、種組成の震災前後変化が大きくなりやすかった。また、こうした定点では、震災後に、単位面積あたり種数や種組成が不安定に変動しやすかった。こうした種数や種組成の変動に強く寄与した種の1つは二枚貝のムラサキインコだった。 以上の解析に加えて、貝類相の多様性や外来種の密度について、長期変動傾向を解析した。その結果、貝類相の多様性が2/3以上の定点において1978~2013年に上昇しており、とくに移動性の貝類においてその傾向が顕著だった。外来種のうち、ムラサキイガイは他二枚貝類よりも顕著な長期的減少を示していた。
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